食料自給率についてはすでに図録0310でカロリーベース、金額ベースの自給率の推移、また品目について穀物自給率、米自給率の推移を掲げた。

 ここでは主な食料の品目別の自給率の推移を掲げた。米については再掲した。また直接食用になるわけではないが家畜の食用を通して間接的には食用となる飼料の自給率についても掲げた。

 1960年当時には、戦後米国からの援助物質等として輸入が定着した小麦、大豆、とうもろこしを除くと、ほとんどの品目で100%前後の自給率を保っていた。

 その後、各品目は全体として自給率を低下させている状況が図から見て取れる。品目別には低下幅にも大きな差がある。

 米は図録0310でもふれたように加工用等に回されるミニマムアクセス米を除いて自給率100%を保っている。

 図中の品目の中で自給率の低下幅が最も低かったのは野菜であり2016年で80%に止まっている。もっとも見方によっては野菜までが80%にまで下がっているともいえる。

 鶏肉と乳製品は70%水準で横ばいに転じていたが、最近は双方ともに65%水準に落ちている。豚肉、魚介類は50%強の水準、牛肉と果実は40%水準となっている。

 肉類全体の自給率は53%(2021年概算値)であるが、国産の食肉もエサ(飼料)の自給率は25%となっており、その分、本当の自給率はより低くなっていると言わざるを得ない。飼料自給率を考慮した肉類の自給率は8%である(畜産物の種類別は下図参照)。カロリー自給率の計算では国産食肉のうち輸入飼料による分は自給率から差し引かれている。

   

 2010年代前半は、品目別自給率は下げ止まりの傾向が見られた。牛肉はBSE問題を契機に2000年以降自給率が回復、鶏肉も鳥インフルエンザを契機に2000年代に入って回復、魚介類も海外における水産物ブーム(図録0270)の影響で輸入減・輸出増となり自給率が上向きとなっていた(ただし2011年度は福島第1原発事故による放射能汚染とその風評の影響により生産と輸出が減少し自給率も減)。

 しかし、2016〜17年には全体的に低下傾向が見られる。

 コロナ禍が襲った2020年には輸入減や家庭食増による生産増で野菜、肉類、牛乳・乳製品、魚介類の自給率が上昇した。これらが生産額ベースの自給率全体を押し上げた点については図録0310のコメント参照。

 日本における食料自給率自体の大きな低下は、図に見られるような各品目ごとの自給率低下の影響もさることながら、戦後、食生活が大きく変化、米が主食、大豆、魚介類を副食とする食生活から、パン・パスタ食、肉食の役割が大きい洋風の食生活へと転換し(図録0280参照)、その結果、米など自給率の高い品目のシェアが縮小し、小麦や飼料穀物など自給率の低い品目のシェアが拡大した点が大きいとされる。

 前者を「品目別自給率減の寄与度」、後者を「品目構成変化による寄与度」ととらえ、カロリー自給率減少の2要因として試算した結果を以下に図示した。


 品目構成変化(食生活変化)の要因は1960年代には大きかったが、だんだんと要因としての役割は低下し、1990年代以降は、むしろ逆転の傾向も現れている。

 品目別自給率低下の要因は一貫して継続して生きたが、21世紀にはいると、これについてもBSE等の疫学上の理由ではあるが自給率低下には歯止めがかかっている。近年の中国製冷凍ギョーザ中毒事件(2008年)や上海食品加工工場期限切れ鶏肉・牛肉使用事件(2014年)も輸入減少、自給率上昇の契機となると考えられる(図録0298、図録8204参照)。今後も、輸入食品について食の安全や衛生上の問題が起こり続ければ、食料自給率は上昇に転じる可能性があろう。

 こうした中、2008年には世界的な穀物高騰の影響で国内でも小麦や大豆、飼料穀物の値上がりが食品価格の上昇をもたらした(図録4710、図録4720参照)。また途上国の食糧暴動、食料輸出規制などが伝えられ、食料自給率の上昇が今更ながら国民の大きな関心事となった。輸入農産物を使った食品の値上げはコメなど自給農産物を使用した食品へのシフトをもたらし品目構成を変化させ、また農業政策次第では品目別の自給率も中には上昇傾向となるもののあらわれる可能性があり、あわせて自給率上昇の実現も現実味を帯びてきていた。

 実際には2008年の食料自給率はカロリーベースで前年の40%から41%へと上昇した。品目別にはコメ、鶏肉、乳製品、大豆などの他、飼料自給率が上昇しており、穀物高騰の影響をみてとることができるが、影響度は予想以下ともいえる。報道によれば「2008年度の食料自給率上昇について、農水省は(1)砂糖の原料となる沖縄県などのサトウキビが台風の被害を免れ豊作だった(2)コメの生産調整(減反)強化を受け、転作作物である大豆の作付けが東北、九州地方で増えた(3)国際的な穀物価格高騰のあおりで高値となったチーズや食用油の原料用大豆の輸入が減少した−−ことなどを要因として挙げている」(毎日新聞2009年8月12日)。

 2010年代は品目ごとの要因は不変であるのに対して、品目構成では久方ぶりにマイナスとなった。食生活変化の要因が前面に立つようになったのは1980年代以来である。

(2008年6月4日収録、2008年8月5日更新、2009年9月18日更新、2010年8月11日更新、2011年8月16日、2012年8月10日更新、2013年8月8日更新、2014年8月6日更新、2015年8月7日更新、2016年8月18日更新、2017年11月12日更新、2018年8月9日更新、2019年8月6日更新、2020年8月6日更新、2021年8月26日更新、2022年8月6日更新、11月23日畜産物自給率図解、2023年8月8日更新)


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