スキルの向上は失業対策および生活向上に不可欠
2013/10/8
技能労働者は失業する確率が他の人より高く、健康状態も悪く、賃金もはるかに低いと、OECDによる成人の技能に関する調査は述べています。
成人の技能の習熟度に大きな開きがある国は、所得格差も大きくなっています。
この調査では、24か国(*)の16歳から65歳の成人の技能を測り、読解力、計算、問題解決力がどのように職場で用いられているかを検証したものです。
技能の開発と利用によって雇用見通しや生活の質がどのくらい改善するか、そしてそれがどのくらい経済成長を促進するか、ということについて明確な根拠を示しています。
アンヘル・グリアOECD事務総長は次のように述べています。「あまりにも多くの人が取り残されている。効果的な教育と生涯学習の機会があれば、誰でもその能力を活かすことができる。
その便益は個人にとっても、社会にとっても、国全体にとっても明確である。」
ブリュッセルで行われた記者会見で、グリア氏はさらに次のように述べています。
「学習は学校を卒業すれば終わるというものではない。政府も人々も、技能への投資を続けることができるし、また続けなければならない。」
この調査によると、学校での学業の質の高さがその後の成人生活の成功の重要な鍵を握っています。
しかし各国はこれを、人生を通じて柔軟で技能志向の学習の機会と結びつけなければなりません。
生産年齢の成人も、自分の技能を開発、向上させる必要があります。
本書の結論では、いくつかの国がその技能水準を引き揚げるにあたって抱えている問題を明らかにしています。
読解力については、成人の5人に1人以上がイタリア(27.7%)、スペイン(27.5%)、フランス(21.6%)では最も基本的な水準と同じ、またはそれを下回っています。それに対して、日本では20人に1人(4.9%
)、フィンランドでは10人に1人(10.6%)です。
成人の3人に1人が、イタリア(31.7%)、スペイン(30.6%)、米国(28.7%)で最も基本的な算数の水準と同じ、またはそれを下回っているのに対して、日本(8.2%)、フィンランド(12.8%)、チェコ(12.8%)では、その水準の人は10人に1人前後です。
またこの調査では、「デジタルデバイド(情報格差)」の度合いについても明らかにしています。それによると、数百万人もの人が、メールの添付ファイルを開くといった単純なコンピュータ技能すら身につけていません。
この格差は、オランダ、ノルウェー、スウェーデンでは成人の7%未満、イタリア、韓国、ポーランド、スロバキア、スペインでは23%以上と、各国で大きな差があります。
主な結論
過去数十年で、より多くの人により良い読解力と計算の技能を身につけさせることに、大きな進歩を示した国もあります。
例えば韓国の若者は日本の若者よりも良い成績を収めていますが、その一方で、韓国の55歳から64歳の労働者の水準はこの年齢の最下位3グループの1つになっています。
フィンランド人の高齢の者の成績は平均とほぼ同じですが、フィンランド人の若者の成績は日本、韓国、オランダとともにトップレベルです。
しかしイングランドと米国では、労働市場に入ろうとしている若者の読解力と計算の技能は、退職間近の人々のそれとあまり違いがありません。
イングランドは、55歳から64歳の労働者の読解力の技能が調査対象国中上位3か国に入っています。
しかし、同国は16歳から25歳の若者の読解力の技能では、最下位の3か国の1つです。
アメリカの55歳から64歳の成人の成績はほぼ平均と同じですが、若者は調査対象国54か国の同世代の中で、最下位です。
この調査で、ある人の実際の技能の水準とその人の学歴との間に大きな差がある場合が見受けられました。
ほとんどの国で、少なくとも大卒者の4分の1が読解力のテストで5段階中下位2段階に入っています。
しかしオーストラリア、フィンランド、日本、オランダ、ノルウェーでは、高卒資格を持たない成人の4人に1人以上が5段階中3番目のレベルに達しており、若い頃の学業が限られていても技能を身につけることができるということを示しています。
社会的背景が技能に強い影響を及ぼしている国もあります。
イングランド、ドイツ、イタリア、ポーランド、米国では、親の教育水準が低いと、その子どもの読解力の技能は、親の教育水準が高い子どものそれよりもはるかに低くなっています。
それに対して、両グループ間の差が最も小さいのは、オーストラリア、エストニア、日本、スウェーデンです。
平均すると、読解力のテストでトップレベルの点数を採った労働者の時間給の中央値は、最も低い水準の点数だった労働者のそれよりも62%高くなっています。
この「投資の見返り」の差には大きな開きがあります。チェコ、エストニア、ポーランド、スロバキア、スウェーデンなどでは、賃金格差は比較的小さく、米国、韓国、アイルランド、カナダ、ドイツでは格差が大きくなっています。
低技能の成人は、高技能の人と比較して、他人への信頼感が2倍も低く、市民社会に関与しているという感じも半分程度しか持っていない傾向があります。
移民の成績は、その国で生まれた人のそれよりも悪く、それは特に子どもの頃からその移民先の国の言葉を習わなかった人に見られる傾向です。
しかし、移民先の国での滞在期間が長くなると技能の習熟度も向上しており、移民の社会党合成策が果たす役割の重要性が示されています。
高技能の労働者は、低技能者よりもさらなる訓練を受ける傾向が平均で3倍も高くなりました。
調査によると、デンマーク、フィンランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデンは、低技能労働者の成人教育率を高めることに最も成功した国々です。
しかし、カナダ、イングランド、北アイルランド、アイルランド、イタリア、スペイン、米国といった、低技能の成人の割合が高い国々は、特に職場における成人教育の利便性を高める努力をする必要があります。
このプレスリリースについては、下記にお問い合わせください。
Andreas
Schleicher: Education and Skills Directorate
(tel. + 33 1 45 24 93 66) ;
Stefano
Scarpetta : Employment, Labour and Social
Affairs Directorate (tel. + 33 1 45 24 19 88) ;
Spencer
Wilson : OECD’s Media Division.
詳しくは、下記のウェブサイトをご覧ください。 http://skills.oecd.org/skillsoutlook.html
注 *
24の国と地域の16歳から65歳の約157,000人に対して調査が行われた。OECD加盟国は22か国(オーストラリア、オーストリア、ベルギー(フランドル地方)、カナダ、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、韓国、オランダ、ポーランド、スロバキア、スペイン、スウェーデン、英国(イングランドと北アイルランド)、米国)。パートーナー国は2か国(キプロス、ロシア)。
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