経産省は民主党政権下の2011年12月に続いて2015年4月にも発電コストの試算を公表した(2011年の試算については図録j009参照)。ここでは、これを他の主要国の発電コストの試算と比較した。

 今回の日本の発電コストのうち「原発については11年の試算で「隠れたコスト」とされた電源交付三法交付金などの政策経費や廃炉費用などをコスト要因として初めて算入。今回も計算方法はほぼ同じだが、安全対策の強化に伴う建設費の増加やふくらみ続ける福島原発事故の賠償費用などコスト上昇要因が多く、11年の8.9円よりどれだけ高くなるか注目された」(東京新聞2015.5.17)。実際は、「安全対策の強化」により事故確率を11年の半分と仮定したため、損害賠償費が11年より3.3兆円多い9.1兆円と見積もっているが事故リスク対応費はより安くなっている。このためもあって、原発コストは10.1円(最低値)と若干の上昇に止まったのである。

 さて、海外の発電コスト試算との比較であるが、まず、日本の原発コストが、他国と比較して最低である点が目立っている。最近は円安傾向となっているので、円高の頃であれば、もっと差が大きかった筈である。日本の原発コストが低い理由は、欧米ではコスト全体の5〜7割を占める資本費(建設費・廃炉費など)が日本の場合3割ほどと見なされているためである。これは、日本の場合、安全対策やテロ対策などの見積もりが低い他に、資本コストの考え方の差のためと思われる。

 図録j009でふれたように、経産省試算の資本費の内訳は「減価償却費(建設費に減価償却率を乗じたもの)、固定資産税、水利使用料、設備の廃棄費用の合計」とされており、いわゆる建設のための資金調達コストにあたる資本コストは考慮の範囲外となっている。

「欧米において、原発がコスト面において劣った発電形態と見なされるのは、建設費が高く、反原発運動などの発生で工期の遅れが発生する原発が、よりリスクの高い投資であることから、資本コストを割高に評価されるのに対し、国策を遂行している電力会社が原発を建設する日本では、資本コストも国債並みに低く抑えられているので、結果的に原発がさほど割高な発電形態にならない」(竹森俊平「国策民営の罠―原子力政策に秘められた戦い 」日本経済新聞出版、2011年)

 国際比較で明確となる日本の試算の特徴は、原発とその他の電源との相対関係である。原発、天然ガス(LNG)、風力、太陽光の4つの電源で比較すると、日本の場合、原発が最低コストとなっているのに対して、海外の場合は、英国は3番目、ドイツは最高、米国は2番目に高いコストとなっている点が目立っている。

 このように経産省の試算は、海外と比較すると、原発コストを過当に低く見積もっているとの感が否めない。

(2015年5月18日収録)


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