【コラム】複数の問屋街を擁する都市の事例

 都市規模や歴史的経緯によって、専門問屋街の分化の程度は都市により大きく異なる。広域的な卸売商圏をもつ東京、大阪、京都のように市街地の中にいくつもの専門問屋街が分化している場合がある一方で、仙台の国分町の雑品問屋街、福山駅前付近の繊維問屋街のように専門問屋街が1つだけの都市もある。

 社会実情データ図録では、東京、大阪、京都については分布図を掲げて独立の図録にしているので、ここでは専門問屋街が分化しているその他の都市の例を掲げておこう。
名古屋の問屋街
菓子(明道町)、呉服(長者町)、機械工具(新音町)、薬品(京町)、履物(花車町・泥江町)、家具(裏門前・大須賀)、自転車(伝馬町)、瀬戸物(東芳野町)、雑貨一般(鉄炮町・末広町)
広島の問屋街
雑品(堺町)、洋品雑貨(本通り)、繊維(比治山通り)、食品(広島駅前近く猿喉橋通り)
 この他、二つの問屋街を有する例としては、浜松、豊橋には食品と繊維の問屋街、甲府、新潟には食品と雑貨の問屋街、松山には家具と雑品の問屋街、沖縄那覇には自動車部品と雑品の問屋街が存在している。

 なお、情報の出所は、杉村暢二(1968)「日本における問屋街の考察 - 中心商店街との関連において」である。