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 「人生は自由になるか」については図録9479で見たところだが、この意識の男女差の状況を見てみよう。この設問に対する国別の回答の高低は文化的なバイアスを免れ得ないので、単純に各国社会の自由度の指標と見なすことはできない。しかし、同じ国の男女は共通の文化や価値観をもっているはずなので、男女差の方はそれぞれの自由度の違いをむしろはっきりと示していると考えられよう。

 図には、各国における男女別の平均点の差を図録9479と同じように大陸別に示した。

 平均点の男マイナス女の値をgとすると、g>0、g=0、g<0の国数は、それぞれ、43、2、15であり、世界的には、男性の方が女性より「人生は自由である」と感じている国が多い。男女いずれの方が人生を自由だと感じているかによって判断するとすれば、大きく捉えて現代世界はやはり男性優位だと言えよう。

 世界の中で男性が女性を大きく上回っている点で目立っているのは、パキスタン、パレスチナ、アルジェリア、イエメン、アゼルバイジャンなどのイスラム諸国である。イスラム諸国を除くとアルメニアやインドで同様の状況にある。東アジア・太平洋では、イスラム国のマレーシアが最も男優位であり、中国がこれに次いでいる。

 同じ中華系の国でも、男優位の中国と女優位の台湾と香港では状況が大きく異なっており、歴史的経緯や社会の在り方で男女差の様相は大きく異なってくることが分かる。

 日本の値は0.07であり、メキシコ、オランダ、ルワンダ、タイ、韓国などと同じく、ほぼ男女差がない点が特徴となっている。

 欧米諸国では、米国、ドイツ、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランドといったプロテスタント国を中心に、女性優位の国が多い点が目立っている。日本もこうした国と比較する限りは男社会と見なさざるを得ないだろう。ただし、ここで調査対象となっていない欧米主要国について、欧州価値観調査(2008~09年)における同じ設問の男女差を調べてみると、英国、フランス、イタリアは、それぞれ、−0.35、0.00、0.53となっており、カトリック国と比較すると日本は、特段、男性優位とは言えないことになる。

 表示選択で、主要国における回答分布を見ると以下のような特徴となっている。

 男優位な国では、中国やインドは、8以上の回答で男性が多く、それ未満で概して女性が多く、全般的に男性優位という分かりやすいパターンになっている。

 男優位な国でもその程度が小さい日本やロシアでは、8の回答について男性が多く、それ以外では、女性が少しずつ少ないというパターンになっている。

 女優位の国については、米国、ドイツ、オーストラリアは、10(全く自由)の割合で女性が男性と比べ特に多い点が特徴であり、それ以外の回答は余り男女差がない。スウェーデンは5〜6で男性が多く、7〜8で女性が多いというパターンとなっている。

 全体として言えることは、波形が左右方向にシフトして男女差が出ているのはインド(あるいは中国)ぐらいであり、その他の国では、10の回答選択肢によって複雑に男女が上下している結果で差が出ているのである。

 日本について、参考までに、以下に1981年からのほぼ5年ごとの結果を示した。男女計では1990年から2005年まで「人生は自由になる」という意識が高まったが、2010年には再度低下している。その間、男女差はプラスになったり、マイナスになったりで、男女の優位性に明確な傾向はないようである。


○調査対象国

 対象国60カ国を図録9479と同じく大陸別に人生態度が楽天的な順に掲げると、メキシコ、トリニダードトバゴ、コロンビア、エクアドル、米国、ウルグアイ、ブラジル、ペルー、アルゼンチン、チリ、ルーマニア、スロベニア、ウズベキスタン、スウェーデン、キプロス、キルギス、トルコ、アゼルバイジャン、カザフスタン、スペイン、オランダ、ドイツ、ポーランド、ウクライナ、アルメニア、エストニア、ジョージア、ベラルーシ、ロシア、クウェート、カタール、リビア、ヨルダン、レバノン、バーレーン、パレスチナ、アルジェリア、チュニジア、イラク、イエメン、エジプト、モロッコ、ガーナ、ナイジェリア、南アフリカ、ルワンダ、ジンバブエ、パキスタン、インド、ニュージーランド、オーストラリア、タイ、マレーシア、台湾、フィリピン、中国、香港、シンガポール、韓国、日本である。

(2019年11月4日収録)


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