国土の中でどの部分のどの範囲を都市とするかは各国によって異なっているので都市の国際比較のためには共通した都市・都市圏の定義が必要である。OECD及びEUはこのため、都市核と後背地からなる機能的都市圏(Functional urban areas)を定義している(末尾図を参照。機能的都市圏としての東京は既存定義の東京大都市圏とほぼ一致していることが分かる。ただし都市核は人口比94%とかなりのエリアを占めており、都心部のイメージよりも広い)。

 ここでは、OECD各国の首都の機能的都市圏における「建物の高さランキング」、言い換えれば「ノッボ都市ランキング」をグラフにした。また機能的都市圏全体の高さとともに都市核及び後背地のそれぞれの建物の高さを示した(それぞれのデータがある場合)。

 同じ定義の各国首都の都市核における緑地比率については図録9392参照。

 機能的都市圏全体での建物の高さランキング・トップ3は、ソウル、東京、そしてニュージーランドのウェリントンである。

 逆に低い方からのトップ3は、ノルウェーのオスロ、ラトビアのリガ、ルクセンブルク(国名と首都名が同じ)である。

 都市核と後背地では建物の高さがかなり違う。OECD31か国の平均では都市核エリアでは9.5mと後背地の4.9mの約2倍となっている。

 後背地(通勤圏)を含まない都市核のみの建物の高さのランキングは、都市圏全体では低くても上位の首都圏がある。すなわち、ソウル、東京は16.5m、13.2mで都市圏全体と同じ1位〜2位であるが、3位はデンマークの首都コペンハーゲンの12.5mである。イスラエルのテルアビブ、スイスのベルン、ルクセンブルクも11mを越えている。

 主要都市では、パリが10.5mとかなり高く、ベルリンは8.9m、ローマは8.8m、ロンドンは7.8mの順で低くなっている。いずれにせよ東京の13.2mはかなり高いと言ってよいことが分かる。

 都市核のみの建物の高さが最も低いのはアイスランドのレイキャビクの6.0mであり、スロベニアの首都リュブリャナの6.7mがこれに次いでいる。

 ノッポ都市は効率の良い都市機能を実現している側面がある一方で、居住環境としては疑問が呈される。

 高層化を志向する神宮外苑の再開発に対する懸念については外国人記者も指摘している。仏紙「ル・モンド」の東京特派員、フィリップ・ポンスによるクーリエ・ジャポンの記事”仏紙「東京は恐ろしく似たり寄ったりな、アジアの巨大諸都市の一つにならんとしている」”(ヤフー・ジャパン・ニューストピックス2023.11.24の末尾部分)ではこう言っている(図録9390から一部を再録)。

「20〜21世紀にかけては耐震技術の発展に支えられ、天の高みを目指すような新・東京が現れた。タワーマンション、巨大な商業施設やホテル、文化施設の建設に加え、2020年の東京オリンピックに向けて不動産の過剰生産がおこなわれた。

 東京の魅力の一つは、コントラストが際立つさまざまな都市空間が共存し、それにより多様なライフスタイルが可能なことだった――部分的には現在でもそうである――。

 しかし、過剰さと高さへの飽くなき欲望による建設熱は、こうした東京の魅力を損なってしまった。神宮外苑の再開発がこのまま進めば、東京の「ゲニウス・ロキ」(土地の雰囲気・風土)にとってさらなる痛手となるだろう」。


(2024年3月8日収録)


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