世界各地で起きた最近の主なテロ
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1月7〜9日 パリの週刊誌シャルリエブド本社で銃撃。パリ周辺で立てこもり事件も続き、計17人死亡
11月13日 パリ中心部の劇場や飲食店など6カ所で銃乱射や爆発が起き、130人が死亡。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明
12月2日 米西部カリフォルニア州サンバーナディーノの福祉施設で武装した男女が発砲。14人死亡
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3月22日 ベルギー・ブリュッセルの地下鉄駅と国際空港で同時テロ。32人死亡、日本人2人を含む約340人負傷。ISが犯行声明
6月12日 米南部フロリダ州オーランドのナイトクラブで銃乱射、49人死亡。ISが犯行声明
6月28日 トルコ最大都市イスタンブールの空港で自爆テロ、44人死亡。当局はISの犯行との見方
7月1日 バングラデシュの首都ダッカで武装集団が飲食店襲撃。日本人7人を含む人質20人と地元警官2人が死亡。ISが犯行声明
7月3日 イラクの首都バグダッドのイスラム教シーア派地区で爆弾テロ、292人死亡。ISが犯行声明
7月14日 フランス南部ニースでトラックが革命記念日の花火を見に来ている群集に突っ込み、86人が死亡
7月22日 ドイツ南部ミュンヘンのショッピングセンターでドイツとイランの二重国籍の男(18)が銃乱射。14〜20歳の8人を含む9人が死亡
12月19日 ドイツのベルリンで、クリスマス市場に男がトラックで突っ込み12人死亡、約50人が重軽傷
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3月22日 英国のロンドンの国会議事堂周辺で男が車で通行人をはねるなどし、5人死亡、40人以上負傷
4月7日 スウェーデンのストックホルムの繁華街でトラックが群集に突っ込み5人死亡
4月20日 フランスのパリ、シャンゼリゼ通りで男が警察官を襲撃し1人死亡、2人負傷
5月22日 英国のマンチェスターのイベント会場で爆発(自爆テロ)、22人以上死亡、約60人負傷。ISが犯行声明
6月3日 英国のロンドン橋で車が歩行者をはね、男らが近くの市場で客らを襲撃、8人死亡。IS傾倒者の犯行
8月17日 スペイン・バルセロナで車が歩道に突入、暴走。13人死亡、100人以上負傷。ISが犯行声明
10月1日 米ラスベガスで乱射、58人死亡
10月14日 ソマリアの首都モガディシオ中心部で爆弾を搭載したトラックが爆破するなどし、500人以上死亡
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2月14日 米フロリダ州の高校で乱射、生徒ら17人死亡
5月12日 パリのオペラ座近くで男が刃物で通行人らを襲撃、5人死傷
10月27日 米ペンシルベニア州ピッツバーグのユダヤ教会堂で銃撃、11人死亡
11月7日 米ロサンゼルス郊外のバーで乱射、12人死亡
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3月15日 ニュージーランド・クライストチャーチのモスクでオーストラリア人の白人至上主義者が銃乱射、50人死亡
4月21日 スリランカのコロンボやその近郊などの教会・高級ホテル計6カ所以上の同時・連続爆破テロ。日本人1人を含む253人死亡
(注)米国の乱射事件年表については図録9365参照。
(資料)東京新聞2016.7.16、毎日新聞2017.5.24、東京新聞2019年3月16日、毎日新聞2019年4月28日ほか


 2015年1月以降、上のように欧州ほかでテロ事件が続き、同月イスラム国による日本人2人の人質事件(殺害予告・身代金要求・死刑囚釈放要求・人質殺害画像公開)、2016年7月にはバングラデシュのダッカで日本人7人ほかの人質殺害事件がおこり、中東地域におけるテロ事件、及び中東と関連して先進国その他で引き起こされるテロ事件に関心が集まっている。

 イスラム過激派などによるテロ攻撃(テロリズム)によって世界的に犠牲者が増加している。テロ攻撃件数の推移については、メリーランド大学のGlobal Terrorism Database(GTD)のデータがよく参照されるが(ネット上のグラフはここから。下にも参考のため掲載)、ここでは、米国国務省のHPに掲載されている数字をグラフにした。米国国務省による州計は、2003年までは「国際テロリズム傾向レポート」によるデータが公表されていたが2005年以降は「テロリズム国別レポート」に衣替えされた(2003年までのデータは図録9360参照)が、ここでは後者の数字を掲載した。

 グラフによれば、世界のテロリズムは件数、死者数ともに2008年以降、漸減傾向となっていたが、2013年、2014年には、再度、激増している。これが、イスラム過激派によるテロの増加が要因となっていることは、IS(ISIS、イスラム国)、アルカイダ、アルシャバーブといったイスラム過激派によるテロの犠牲者数が目立っていることからもうかがえる。

 冒頭の図に掲げた米国国務省のデータによれば2014〜17年には攻撃件数、死者数とも、毎年、減少していたが、2018年には再度両者ともに増加した。2019年には再び減少に転じている。

 2019年の死傷者数の対前年の動きを見ると、国別には全体的に減少している。テロ組織別には、IS(ISIS)本体は減少しているものの支部的な組織が増加している。


 国際的なテロリズム組織の概要や分布については、公安調査庁のHP「国際テロリズム要覧 (Web版)」にも掲載されている。


【コラム】テロリズムの現場で取材するフリージャーナリスト

(イスラム過激派の「イスラム国」による2015年1月の日本人人質テロ事件で殺害された2人のうちのひとり後藤健二さんはフリーのジャーナリストだった。この事件で、テロが頻発する危険地域での報道取材のあり方についても関心が高まった。以下は、2015年2月3日の東京新聞の 【こちら特報部】「フリー頼みの紛争報道 問われる大手メディア」という記事からの引用である。)

 誰かが危険地帯に足を踏み入れて取材しなければ、戦禍に苦しむ民衆の悲劇は伝わらない。だが、そこで命を落とすジャーナリストは少なくない。過激派組織「イスラム国」を名乗る集団による日本人人質事件では、紛争報道のあり方があらためて問われている。大手メディアは、報道の義務と記者の安全確保とのバランスをどう取ればいいのか。後藤健二さんのようなフリーランス頼みの現状に問題はないのか。(中略)

 元NHKプロデューサーで武蔵大学教授の永田浩三氏は報道番組「クローズアップ現代」を担当していた当時、後藤さんと親交があった。フリーランスの問題は「命の保証もないのに取材し、その素材を放送に使用するかどうかはテレビ局側が一方的に決める。圧倒的に立場が弱い点にある」とみる。「イラク戦争でバグダッドが陥落した際、米軍に随行するNHKの取材映像は歓喜する市民ばかりが映っていたが、後藤さんの映像は市民側の複雑な表情も捉えていた。ところが、NHKの取材映像を使うよう命じられた」

 永田氏は「後藤さんはシリア入りする前、誰かを気遣うように「全ては自分の責任」とする映像を残していた。あのメッセージを読み解き、なぜ後藤さんを守れなかったのか、日本のジャーナリズムの宿題として議論していく必要がある」と訴える。



(作家で元外務省主任分析官の佐藤優は、後藤健二氏と同じキリスト教徒として抱いた次のような感想を自分が定期的に寄稿している東京新聞「本音のコラム」欄の「キリスト教徒の死生観」という記事(2015年2月6日)で明らかにしている。引用の中で湯川氏を誰も助け出そうとしなかったとしているのは湯川氏が傭兵(民間軍事会社)として戦地に赴いていたのでイスラム国に捕らえられたのも自業自得と考えられていたことを指していると考えられる。)

 過激派組織「イスラム国」によって殺害されたジャーナリストの後藤健二氏は、日本基督教団に所属するプロテスタントのキリスト教徒だ。筆者もこの教団に所属するので後藤氏の心情がわかる。

 イエス・キリストは、九十九匹の羊を残してでも、迷った一匹の羊を捜すべきだといった。「イスラム国」に湯川遥菜さんが捕らえられたとき、誰も本気で彼を助け出そうとしなかった。「誰もやらないことならば、君がやらなくてはならない」という神の声が後藤氏に聞こえたのだと思う。

 メルマガ「クリスチャントゥデイ」(昨年五月三十日)のインタビューを読むと後藤氏の信仰がよくわかる。「もし、取材先で命を落とすようなことがあったとき、誰にも看取られないで死ぬのは寂しいかなとも思いました。天国で父なる主イエス様が迎えてくださるのであれば、寂しくないかな・・・なんて、少々後ろ向きな考えで受洗を決意したのは事実です」

 旧約聖書詩篇54篇の「神は私を助けてくださる」という言葉について、後藤氏は、「この言葉を、いつも心に刻み込んで、私は仕事をしています。多くの悲惨な現場、命の危険をも脅かす現場もありますが、必ず、どんな方法かはわかりませんが、神様は私を助けてくださるのだと思います」と述べる。筆者も後藤氏の死生観から謙虚に学びたい。

(2015年年2月4日収録、2月5日GTDデータ・グラフ掲載、2月7日佐藤優見解引用、2015年6月20日更新、2016年7月3日更新、7月16日最近のテロ年表、7月24日テロ年表追加、2017年5/24・6/22テロ年表追加、8月12日更新、8月21日年表更新、2019年3月16日・4月22日・24日データ・年表更新、4月28日表修正、2020年7月1日更新)


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