わが国の所得格差(不平等度)の長期推移については図録4660に掲げたが、ここでは、英国の不平等度の長期推移についての図を示した。

 図の元資料である世界銀行「世界開発報告2006」は英国の不平等度の推移について以下のように記述している。

「19世紀英国の様々なタイプの政治改革は、所得分配に影響することが明らかな経済制度に結びついた。最も明確なのは1867年以降の教育振興である。また、同時期には、大がかりな労働市場改革が行われ、その結果、労働側の交渉力が強化されるとともに労働党の結成に結びついた。1906年以降、自由党ハーバート・アスキス政権は、また、福祉国家の基礎を導入し、その後、1945年、労働党政権によってさらにそれが拡張された。英国は自国の繁栄を促進するような諸制度を導入しはじめたとはいえ、なお、非常に不平等な社会であり、19世紀はじめ、あるいは半ばまでは、その不平等が拡大していたことは確かである。資料によって不平等を正確に測定する方法は異なっているが、19世紀はじめ、あるいは多分19世紀半ばまで不平等度は上昇していたと見られるのである。

 1870年以降の不平等度の低下は、選挙権を実際に労働者にまで拡張した1867年の第2次改革法と密接に関係している。民主主義が相対的な貧困層に参政権を与えるとき、彼らは自分たちに有利な経済制度と社会的な所得配分の方向に向かうよう民主主義を行使するのである。」

 我が国の不平等度の推移と比較すると、以下のような点が目立っている。

1.英国の不平等度は、ジニ係数で見て、19世紀の0.6水準から長期的に0.4強水準へとなだらかに低下している。

2.我が国の不平等度は、図録4660に見られるように、戦前は戦後に比べ非常に高かったが、それでも0.4〜0.5の水準であり、英国水準よりは低かったようだ。

3.戦後の日本の不平等度は英国と比べても0.35程度の非常に低い水準となった。

4.先進国は英国に典型的に見られるように福祉国家への転換と労働者に徐々に参政権を付与する形で段々と所得格差が縮まったが、日本の場合は、米軍占領下の戦後改革でいっきにそれが進んだという違いがある。

(2006年3月11日収録)


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