近代化の中で、迷信として排斥され、占いや縁起担ぎにこだわった行動は少なくなったが、それでも残っている縁起のよさに対する配慮として、誕生した子どもの命名時の姓名判断と結婚式など特別の日の日取りの縁起(結婚式は仏滅を避けた方がよいなど)がある。

 ここでは、東アジア4カ国の大学・研究機関が共通の質問票を使用して共同で行った各国の全国レベルのアンケート調査の結果から、上記2つの点を気にしているかについての設問に対する回答を見た。EASSというこの共同調査の概要と中国調査の回答者属性をページ末尾に掲載した。資料出所は日本側の担当機関の1つである大阪商業大学JGSS研究センターのHPである。

 早くから近代化の進んだ日本では、東アジアの他国との比較で、縁起を気にする人は少なくなっているかというとそうでもない。

 子どもの名前に関して姓名判断を参考にした経験がある人は51.1%と台湾人の64.3%に次いで高くなっている。韓国人も日本人ほどではないが4割以上が姓名判断を気にしている。中国人が17.2%ともっともこの点を気にする割合が少なくなっている。

 結婚式等の日取りについては、「かなり気にする」と「ある程度気にする」の合計では日本人が75.1%と最も気にしており、韓国人は37.8%と最も気にしていない。台湾人、中国人は日本人と近い。「かなり気にする」だけの割合では台湾が最も高く、中国人がこれに次いでおり、日本人の割合は台湾、中国の半分である。

 このように縁起のよさを気にするかについては、東アジアの中で法則的な傾向は認めにくい。かつてはアジアの後進性の1特徴として取り上げられることもあった点ではあるが、今は、合理的な判断の必要性がそもそも余りないことに関しては、縁起担ぎも許容の範囲内という気分が強いと思われる。個別事象や国により事情は様々といえよう。欧米や世界と比較したなら東アジアの特殊性が浮かび上がるものなのかは不明である。

 日本の若者の中で、あの世、奇跡、お守りやお札の力といった非合理的な存在や力を信じる者が増えている点については図録2927参照。


(2011年5月9日収録)


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