消費支出に占める食費の割合であるエンゲル係数について、県庁所在都市別に家計状態との関連を図録7717で探った。

 消費支出との相関は、エンゲルの法則どおり、負の相関となっていたが、相関の程度を示すR2値は0.2636とそれほど大きくなく、大阪市、京都市、神戸市といったエンゲル係数の上位都市は、むしろ、食い意地が張っているだけとも解された。

 ここでは、家計の消費支出全体ではなく、現代ではスマホ代が大きな割合を占める通信費支出との相関を探った。

 すると、相関の程度を示すR2値は0.4373とむしろ消費支出全体よりかなり高い結果となった。

 エンゲル係数と通信費(携帯電話通信料)との相関の高さを指摘している久保哲朗「都道府県別統計とランキングで見る県民性」サイト(https://todo-ran.com/)では、経済的に余裕があってエンゲル係数が低い世帯ほど通信料に使える料金も多くなると解している。

 つまり、アイスクリームの消費と溺死者数と相関のような、両者が直接関係しているわけではないいわゆる疑似相関をあらわしているととらえているのである。

 しかし、そうだとすると疑似相関のR2値の方が、直接相関のある家計状態とエンゲル係数との相関のR2値よりもずっと高いということになってしまい少し変である。

 むしろ、家計状態の余裕というより、スマホ代が食費を圧迫している程度がエンゲル係数を下げる要因として大きく作用していると考えた方が合理的なのではないだろうか。

 つまり、金沢、山形、水戸のように、スマホでのつながりを食べることより優先するとエンゲル係数が低まり、それとは反対に、神戸、京都、和歌山のように、ネットより食を重視するとエンゲル係数が高まるという側面が大きくなっているのではなかろうか。

 実際、時系列的な分析でも、一時期、家庭でのIT化の進展で通信費が大きくシェアを高めた時期に、経済情勢からは、本来上がっていてもよかったエンゲル係数がむしろ下がっていたと解されるのである(図録2355「エンゲル係数の謎めいた動き」参照)。

(2020年10月4日収録)


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