「家計調査」では野菜購入数量の地域別データが得られる。ここでは、ひとつひとつの野菜品目の地域分布を分析する代わりに、各品目の購入量1位都市及び最下位都市の対全国倍率で示すことで、野菜消費の地域的なばらつきを調べてみよう。

 対全国倍率が1に近い野菜ほどばらつきが小さく、全国水準化が進んでいる野菜だと見なすことができる。

 1位都市の倍率が高い野菜品目は、特定の地域で特に食べる量が多い野菜。そして、倍率が低い品目は、どの地域でも食べられている全国的に平準化の進んだ野菜である。

 さやまめを最も多く購入する新潟市では全国2.48倍の消費量となっている。これとは対照的に、キャベツを最も多く消費する秋田市でも対全国倍率は1.21倍に過ぎない。

 平準化が進んでいる品目は、キャベツ、たまねぎ、じゃがいも、ピーマン、にんじん、だいこんなどであり、よく食べられている主要野菜にほぼ一致する(野菜の購入数量ランキングは図録0221に掲載)。地域特化度が高い品目はさといも、れんこん、たけのこなど衰退気味の野菜が多い(躍進野菜か衰退野菜の一覧は図録0286参照)。

 1位都市の顔ぶれを見ると、生鮮野菜計、葉茎菜類、根菜類やトマト、レタス、ねぎが1位の千葉市が「王道を行く野菜都市」として目立っている。他方、「その他」やさといも、さやまめといった特定野菜の倍率が高い新潟市や1位都市の品目が5品目と最も多い秋田市は、「特定品目へのこだわりが特色の野菜都市」だといえよう。

 次に、最下位都市の方から地域的なばらつきを見てみよう。

 生鮮野菜計の購入数量1都市の千葉市は対全国倍率1.22倍であったが、最下位都市の那覇市の倍率は0.84倍である。つまり生鮮野菜計では、多い方が22%、少ない方が16%の幅をもっていることになる。

 那覇市の野菜購入量が少ないのは、葉茎菜類が0.77倍と特に少なく、また、キャベツ、もやし、かぼちゃ、えのきたけ、きゅうり、なす、はくさい、ねぎ、生しいたけ、たけのこ、れんこんといった多くの品目(11品目)で全国最下位となっているからである。

 那覇市は、にんじんでは、むしろ、全国で購入数量が最も多くなっており、全国の中でも特色のある食文化を有しているといえよう。

 最下位都市の購入数量が少ない野菜としてはにんじんの0.84倍がもっとも全国との乖離が小さく、平準化の進んでいる野菜品目となっている。にんじんに次いで、たまねぎ、しめじ、レタス、ピーマン、じゃがいもなどが平準化の進んでいる野菜であり、これらは1位都市の倍率の低い野菜と順位は異なるがほぼダブっている。

 他方、倍率が低く、地域特化度が高い野菜として目立っているのは、れんこん、さといも、たけのこなどであり、これらも1位都市の倍率から見た地域特化度の高い野菜とほぼ品目が共通である。

 那覇市と並んで最下位都市として多くの品目で登場するのは、宮崎市であり、4品目で最下位となっている。このほか、青森市や徳島市も2品目の野菜で最下位となっている。

 青森市はじゃがいも、さといもといったいも類で最下位である一方で、ごぼうでは1位都市となっている。徳島市はピーマンやごぼうで最下位である一方で、さつまいもでは1位都市となっている。青森市、徳島市は野菜の好き嫌いが激しい都市だともいえよう。

(2020年12月11日収録)


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