都道府県の自殺率(人口10万人当たり自殺者数)の上位10県を高い順にあげると、秋田、青森、岩手、島根、新潟、宮崎、山形、高知、和歌山、佐賀となっている。最も高い秋田県の自殺率42.1は世界第1位のリトアニアの44.7(2002年)よりは低いが、世界第2位のロシアの38.7(2002年)を超えている(図録2770参照)。

 また下位5県を低い順にあげると、奈良、神奈川、徳島、千葉、愛知となっている。最も低い奈良県の自殺率18.0は、世界第18位のキューバの18.3(1996年)を下回っているが、世界19位のフランスの17.5(1999年)を上回っている。

 高齢者の自殺の原因・動機は「健康問題」が多くを占めている一方、40〜50歳代では、「仕事・生活・経済問題」が原因・動機となっている(図録2760参照)。時系列でも景気動向との相関が認められる(図録2740参照)。自殺率の高さはこの健康(高齢化)と経済(仕事・生活)という2大要因でかなりの部分説明される筈である。前者の要因を「高齢化要因」とし、後者の要因を「経済要因」として都道府県データを対象に回帰分析を行った結果から各都道府県の自殺率の高さを要因分解した。「高齢化要因」「経済要因」の指標としてそれぞれ65歳以上人口比率と失業率をとっている。また実績値と推測値の差を「その他の要因」としている。

 自殺率の高い県では、秋田県は高齢化要因(健康要因)と経済要因を合わせると全国で最も高く、高齢者の多さや景気の悪さから全国1となる可能性をもっている。実績値はこうした要因による部分の他に、「その他要因」が加わり更に高い自殺率となっているのが実情である。青森、岩手も同様の状況にある。同じ東北でも仙台を抱える宮城は、高齢化の程度が低く、経済もそれほど悪くなく、また「その他要因」は北東北3県とは対照的に自殺率を低くする方向に働いている結果、全国平均より低い自殺率となっている。

 島根、新潟、宮崎はそれぞれ全国順位で高いばかりでなく、3要因がそろって自殺率を高める方向に働いているため、それぞれ、山陰、北陸、九州の中で目立って自殺率の高い県となっている。一方、高知、和歌山は高齢化要因(健康要因)と経済要因では自殺率を高める方向で働いているが、その他要因の影響は影響がないか、むしろ低める方向である。

 自殺率の低い県では、ベッドダウン化の進んでいる奈良県が全国1自殺率が低い県であるが、高齢化要因、経済要因で低く、さらにその他要因でも自殺率を低める方向が認められる。徳島県は、高齢化要因、経済要因では、状況はよくないが、その他要因が自殺率を低める方向で多いに働いているため全国3位の低さとなっている。

 「その他要因」を全国的に見ると東高西低の傾向にある。地理条件、積雪、県民性など風土的なものが感じられるが、詳細は不明である。

 以下に都道府県の自殺率データを同じ区分で分布マップにしたものを2002年当時と最近年について掲載した。東北が最も高く、北陸、山陰、南九州がこれに次いで高いといった地域構造は余り変化がないが、水準自体はかなり下がってきていることが分かる。



(2004年9月19日収録、10月13日図に順位追加、「景気要因」を「経済要因」に用語変更、2015年9月14日2年次の自殺率マップを掲載)


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