厚生労働省の国民生活基礎調査では、3年ごとに、サンプルを増やし都道府県別の結果が得られる大規模調査を行っている。大規模調査の際には、通常の世帯票、所得票に加えて、健康票、介護票、貯蓄票が調査票として使用される。

 睡眠不足や睡眠負債が国民の健康上の大きな課題となっているので、この健康票の設問の1つである睡眠時間についての都道府県別の結果を紹介することにする。

 睡眠時間については生活時間を調べている総務省の社会生活基本調査でも平均時間が集計されているが、ここで取り上げた国民生活基礎調査では、5時間未満から9時間以上までの1時間毎の各時間帯で区切られた複数の選択肢から1つを選ぶという方式が採用されている。ここで結果を示すのは、7時間未満が睡眠不足の一応の目安と考えて、7時間以上の割合を指標とした。「以上」にしたのはグラフ上のマイナス方向が、価値上のマイナス方向と一致させるためである。

 上にはX軸に都市化の程度、Y軸に睡眠7時間以上割合を取った相関図を示した。

 結果は、右下がりの傾向が認められ、想定どおり、都市化が進んだ地域ほど、睡眠が十分でない人が多くなっていることが分かる。

 睡眠が十分な人は、最も割合が多い秋田では4割近いのに対して、東京、大阪、神奈川といった大都市部では4分の1近くまで少なくなるのである。

 大都市地域では、仕事の時間や商業・サービス施設・飲食店の開店時間などが24時間化しているので、生活が夜型に傾きがちである影響によるものだと考えられる。

 相関図における右下がりの傾向からはずれた地域もある。宮城、北海道などは都市化が進んでいる割に、よく眠っている者が多い。また、徳島、香川、岐阜、三重、奈良などは、都市化の程度以上に寝不足が多くなっている。

 次の図のように睡眠時間は高齢者ほど多くなる傾向がある(同じ傾向を示す社会生活基本調査における男女年齢別の平均睡眠時間は図録2325参照)。


 従って、高齢化の進んだ地域ほど睡眠時間は長くなるバイアスがかかる。都市化の進んだ地域では平均年齢が低いので、大都市で眠る時間が少なくないのはそのためなのではないかという疑問が生じる。

 そこで下図に年齢調整済みの都道府県別の睡眠時間7時間以上割合を示した。ここで年齢調整とは各地域が全国と同じ年齢構成だったとしたらどんな値になったかを示すものである。結果は、年齢構成の違いによる影響はそれほど大きくはないことが分かる。「大都市は眠らない」という傾向はやはり確かなのである。


(2017年11月22日収録)


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