日本は欧米先進国と比較して男性教師比率の非常に高い国である(図録3852)。世界的に見ると教師に女性が多いのは、教育を育児の延長と考えているからだと思われる。

 ところが、途上国では国を挙げて教育に力を入れる富国強兵が大きな課題となり、そういう場合、教師も男子が一生をかけて取り組む職業とみなされるようになるのだと思われる。日本の男性教師比率の高さは、儒教の影響に加えて、幕末、明治以降に近代国家形成を急いだ歴史に淵源を有すると考えてよかろう。

 そうだとすると、男性教師比率が高い地域は、そうした意味での教育熱が従来から高かったところだとみなすことも可能であろう。そこで、ここでは、都道府県別の男性教師比率をグラフにした。

 小中学校の男性教師比率の高いトップ5は、値の高い順に、北海道、長野、鹿児島、静岡、鳥取の順である。上位2位の北海道と長野だけが50%を超えている。

 北海道で男性教師比率が高いのは、道内にへき地が多いことと関係しているという説がある(祖父江孝男「県民性の人間学」p.141)。

 長野はかねてより教育県として有名であり、教育者の地位も高いと見られている。長野の男性教師比率が高いのはそうした状況と整合的な結果といえよう。長野の場合、かつては資源や立地の優位性に頼ることが難しい山国だったため、フィリピンと同様に人材立県の考え方(外へ出て稼ぐという考え方)が強かった影響もあろう。

 長野では、信濃教育会が善光寺、信濃毎日新聞とならび「長野県3大タブー」の一つといわれている。全国の都道府県の中で満蒙開拓に従事した長野県民・生徒が最も多かったのも信濃教育会が一定の役割を果たしたからである。そうした事情も、こうした状況と関係していよう(図録5224dの小林信介(2005)参照)。

 逆に、小中学校の男性教師比率の低いボトム5は、低い順に、徳島、沖縄、香川、広島、石川である。こうした県は、富国強兵の論理に影響されるところが弱かった地域といえよう。

(2021年2月8日収録)


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