家計調査によって、1世帯当たりの鮮魚消費量の地域差を見てみよう。

 2005年の年間鮮魚消費量(購入数量)は、青森市が60sで最も多く、富山市、金沢市、鳥取市といった北陸、山陰地方の都市がこれに続いている。最も少ないのは、那覇市の26sであり、甲府市がこれに続いている。地方毎に多い少ないがあるというより、都市によって違いがあるというパターンである。全国的には鮮魚消費量は平準化している。

 一方、世帯員数も多く、肉類もそれほど普及していなかった時代の1955年を調べてみると、最も多いのは青森市の200s、2位、3位は鳥取市、長崎市となっていた。逆に最も少ないのは、高崎市の37s、次ぎに松本市の51sとなっていた。

 1955年の段階では、北海道・青森、及び中国・四国以西の西日本で鮮魚消費量が多いという地域パターンが認められる。西日本の地域は、東日本と比べ海岸線が長く海洋性の風土である点がこうした鮮魚消費の地域格差の背景となっていたと思われる(都道府県別の海岸線延長については、図録7232参照)。

 両年について、上位3市と下位3市の消費量の倍率格差を計算すると2005年は2.05倍であるのに対して、1955年は3.26倍となっており、高度成長期以前は内陸部と海岸部で消費量に大きな違いがあったのに対し、流通網の発達により、最近は、地域的な鮮魚消費の格差が縮まったのだといえる。また、高度成長期以降肉類の消費が拡大し、特に、かって鮮魚を多く消費していた西日本で肉類の消費が大きく伸びて魚に代替したことも全国的な平準化の要因となっていると考えられる(図録7237参照)。

 全国的な魚介類消費の時系列変化、及び、かって見られた沿岸部と山間部での魚介類消費格差については、図録0290参照。特定の魚種については図録7730参照。

 私の印象では、西日本の人間は貧乏人でも味にうるさく、東日本の人間は金持ちでも味音痴なところがあるが、歴史的に長く続いた鮮魚消費の地域差が背景となっていると私には思われる。

 なお、対象となった全国都市は、2005年は、各県庁所在都市、及び政令市の49都市であり、具体的には札幌市、青森市、盛岡市、仙台市、秋田市、山形市、福島市、水戸市、宇都宮市、前橋市、さいたま市、千葉市、東京都区部、横浜市、川崎市、新潟市、富山市、金沢市、福井市、甲府市、長野市、岐阜市、静岡市、名古屋市、津市、大津市、京都市、大阪市、神戸市、奈良市、和歌山市、鳥取市、松江市、岡山市、広島市、山口市、徳島市、高松市、松山市、高知市、北九州市、福岡市、佐賀市、長崎市、熊本市、大分市、宮崎市、鹿児島市、那覇市である。1955年は特定の全国28都市であり、具体的には、札幌市、帯広市、青森市、仙台市、高崎市、千葉市、東京都、横浜市、富山市、甲府市、松本市、浜松市、名古屋市、松阪市、大津市、京都市、大阪市、神戸市、奈良市、鳥取市、広島市、防府市、徳島市、今治市、福岡市、長崎市、都城市、鹿児島市である。

(2007年1月17日収録)


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