交通事故総合分析センターがまとめている年齢別の歩行中の交通事故死傷者数を東京新聞が紹介した図を上に示した。これは、7歳児前後の異例に高い死傷者数に警鐘を鳴らすために掲載されたものであるが、むしろ、それ以後の加齢にともなう身体能力への過信と反省の継起を示すものとして興味深い。

加齢に伴う複数のピークとボトム

(ピーク)7歳(小学1年生でなる歳)
(ボトム)14歳(中学2年生でなる歳)
(ピーク)20歳代半ば
(ボトム)40歳
(ピーク)50歳前後
(ボトム)62歳
(ピーク)68歳
(ボトム)70歳
>以後は一方的上昇

 歩行中に事故に最も遭いやすいのは7歳である。7歳の交通事故死傷者数は10万人当りで140人と断然トップであり、全体平均の46人の3倍にも及んでいる。7歳だけでなく、その前後の6歳や8歳も非常に高くなっている。7歳の中でも男児は女児の約2倍となっている。

「就学前は両親ら大人と一緒に外出することが多いが、小学校に入学するころから一人で出掛ける機会が増えてくることが要因とみられる。一人での行動に慣れていない6〜8歳、特に活発な男の子は要注意といえそうだ」(東京新聞2017.3.10)。

 14歳までは、成長にともなって、心身のバランスもとれ、注意力も高まって、歩行中の交通事故は大きく減少する。

 ところが、20歳半ばに至るまで、再度、歩行中の事故は増えていく。思春期のいきがって無茶をする年齢になるからだと思われる。

 こうした不安定な時期を過ぎると、無理はしない大人の感覚が身につき、再度、歩行中の事故は減っていく。失恋や若気の至りの失敗なども反転の契機となると考えられる。

 私の場合は、仕事をはじめたばかりの時期に円形脱毛症になったことが反省のきっかけとなった。世間は思うようにならないのだから期待し過ぎないようにしようと自覚したのである。

 40歳頃から身体能力が衰えていくに伴って、歩行中の事故は増えていく。しかし、不可逆的に歩行中の事故が増えるのは70歳以上になってからである。それ以前は、なお、上昇下落を繰り返す。

 40歳代は歩行中の事故が増えるが、その後、62歳まで再度事故は減る。これは、40歳代には、実は心身が衰えているのに、まだみずからが若いと過信していて、若いときと同じ要領で安全に注意するだけなので、かえって、事故に遭いやすくなるのだと考えられる。

 しかし、50前後には、日常生活での加齢に伴ういろいろな不祥事を経験する結果、もう若くはないのだという自覚と反省が生じ、より注意深くなるとともに、若いときには行わなかった事前回避行動にも出るようになるため(危ない道路は通らないなど)、再度、歩行中の事故は減っていくのだと思われる。

 私の場合は、通勤途上の電車の乗り換えの際に座りたいがためにホーム上でダッシュし肉離れとなったことが反省の契機となった。これ以降、ダッシュはしなくなった。

 同じことの繰り返しを、あまりはっきりしない上昇下落であるが、その後も一回繰り返してから、いよいよ、70歳ぐらいからは、気をつけても、なお、セーブすることができない身体能力の衰退過程に突入し、歩行中の事故はどんどん増えていくことになるのであろう。

 若い頃を過ぎると、身体能力の衰えや、こうした過信による失敗や反省が起こるかどうか、また何時起こるかも人により様々となる。従って、歩行中の事故率についての年齢別のデータは相殺しあって、上昇下降の程度も、それほど明瞭ではない。しかし、年齢の区切りによる一定の傾向がうかがわれるのが興味深いのである。

 一定期間腕が上がらなくなる四十肩、五十肩と呼ばれる加齢に伴う身体上の症状は、私見によれば、若いときのからだが年寄りのからだに移行する際の適応症状なのではないかと思う。40歳や50歳に必ずあらわれるわけではないが、その近辺である場合が多いのでそういう名称となったのであろうが、歩行中の事故率の年齢別のピーク、ボトムの繰り返しも似たような現象なのだと思われる。

(2017年3月13日収録)


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