携帯電話(モバイルフォン)は世界中で普及率が急上昇しており、新しい文明の利器としての地位を確かなものにしている。図録にはITU(International Telecommunication Union)が調べた人口100人当たりの携帯電話契約台数とその推移を掲げた。モバイルフォン普及率の世界マップは図録6290

 2017年段階で最も普及率が高いのは香港であり、これにアラブ首長国連邦、コスタリカ、タイ、インドネシア、南アフリカ、ロシア、シンガポール、イタリアと続いている。1位の香港では普及率が100人当り249台と非常に多く、また香港を例外としても、これらの国では普及率が100人当り140台水準を超えている。個人用と仕事用を使い分け、さらに現場用とオフィス用などそれらを複数の用途で別々に使用している可能性が高い。仕事用が会社負担ならよいが、個人負担しているとすると家計に占める負担は非常に高くなると考えられる(図録6367で見た家計に占める通信費割合がマレーシアやロシアで高い点と関係ありそうである)(注)

(注)利用率100%超はむしろ個人のSIMカード複数利用によるという見方もある。2020年の「日本の154.2%をはじめ、複数国が100%を超えている。これは「契約数÷人口」から算出しているのに加え、プリペイドの扱いやSIMカード(契約者情報を記録したICカード)の互換性への対応が各国で異なっていることを起因とする。要は一人が複数枚のSIMカードを「契約」し、電話をかける相手によってカードを切り替え、少しでも安い料金で利用しようとする「生活の知恵」的な使い方による。例えば1人が3枚のSIMカードを使い分けているとすれば、契約数は3、人数は1人なので、普及率は300%と算出される」(不破雷蔵ヤフー記事)。同記事はまた不活性化されているSIMカードを契約数から除外するかや違法SIMカードの取り扱いなどの差で各国の値が年ごとに上下する点を指摘している。いずれにせよ、契約数での比較は頼りにならず、むしろ国際意識調査で携帯電話使用率を調べた方が真実に近いと思われる。

 日本は図の国の中では13位であり、特段高くないが、ドイツ、韓国、米国、英国、フランスなどの主要先進国を上回るに至っている。

 1997年から10年ごとの変化を見ると、1997年段階では、フィンランドの42台、スウェーデンの36台など北欧諸国の普及率が世界に先んじていた。これは雪や凍結でクルマが立ち往生しても連絡できるように自動車電話が普及していたためであると言われていた。

 その後、2007年にかけて、欧米先進国で普及率が100%を越え、アジア諸国も急速にキャッチアップした。

 近年では、2007年段階では、それほど普及率が高くなかったコスタリカ、タイ、インドネシアといった途上国で急速に普及率を伸ばしている点が目立っている。2007年段階で100%を越えていた欧米先進国では、むしろ、近年は伸びが停滞、ないし低下(イタリア、英国など)している。

(日本の世帯普及率の推移は図録6350参照、中国の普及率推移は図録8200参照)

 対象国は、38カ国であり、普及率の高い順に、香港、アラブ首長国連邦、コスタリカ、タイ、インドネシア、南アフリカ、ロシア、シンガポール、イタリア、アルゼンチン、ニュージーランド、マレーシア、日本、スイス、フィンランド、ポーランド、ドイツ、チリ、イスラエル、ベトナム、スウェーデン、韓国、ハンガリー、サウジアラビア、米国、オランダ、英国、チェコ、スペイン、ブラジル、オーストラリア、フィリピン、フランス、中国、インド、ナイジェリア、パキスタン、キューバとなっている。

(2005年3月7日収録、2006年11月20日2005年値更新、2015年10月6日更新、2018年10月21日更新、2022年3月23日(注))


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