私事であるが、携帯電話会社の商道徳のなさに腹が立って、充電能力がゼロに近くなったにも関わらず続けていたモバイルバッテリーを使ったガラケー使用もついに限界に達し、菅前総理のおかげで通信料も安くなったので昨年(2022年)6月についにスマホをはじめた。

 ピューリサーチセンターの調査結果を見ていたら、私のような中高年がスマホをはじめるのは、この7年間における全世界的な動きであることが分かったので、それを示すデータを掲げた。対象国はポーランド、日本、フランス、ドイツ、英国、カナダ、イスラエル、スペイン、韓国の9か国である。

 どの国でも2015年の段階には50歳以上の中高年のスマホ所有率はおおむね5割を下回っていて(例外は国を挙げてICT先進国化を追求している韓国の74%)、特に、日本は18%と非常に低かった。ところが、7年後の2022年には、いずれの国でもこの値は急上昇し、特に日本は74%に達する最大幅の上昇を見ている。

 ポーランドのように経済発展が遅れていてスマホ普及がやや遅れていた国と違い、日本の場合は、スマホ以外の連絡・コミュニケーション手段、決済手段が発達していて不便を感じることが少なかったのでスマホ普及率が低かったのだと言える(この点の裏づけについては図録6245参照)。

 ところが、スマホが提供する便利さの向上が無視できない程度にまで高まってきたので、日本の中高年も手を出さざるを得なくなってきたというのが実情であろう。もちろん、スマホ利用料金(機器代と通信料金)が低下・透明化したのもスマホ普及を促した大きな要因だろう。なお、通信費負担が海外より重たかったのが日本でスマホ普及が遅れていた理由の一つだった状況は図録6366参照。

 ICT業界のお先棒担ぎたちは、スマホ以前の携帯電話を、進化から取り残されたガラパゴス諸島のケータイを意味する「ガラケー」などと名付け、あたかも中高年日本人を古臭い無能人間であるかのように決めつけていたが、現状では、英国、カナダなどのICT先進国の中高年よりもスマホ利用率が高くなっているデータを見れば、それがまったくの濡れぎぬだったことが明らかとなる。

 スマホ所有率の上昇とともにSNS(ソーシャルメディア)利用率も、特に中高年において大きく進展している点は、もう1つの図で明らかである。原資料から両年次のデータがそろっている対象国は2つの図で異なっている。スマホ所有率で対象国となっているカナダ、イスラエル、スペイン、韓国はSNS利用率ではデータがなく、その代わりスマホ所有率がなかった米国が加わっている。

 いずれの国でもスマホ所有率と同様にSNS利用率が特に中高年で上昇しているが、特に日本の50歳以上2015年は10%だったのが、2022年にはもっとも高い米国と同レベルの60%まで急上昇しており、慎重なドイツが16%から34%へと余り上昇していないのとは大きく異なっている。デビューは遅いが、はじめるとはまり込むタイプなのだろう。

 いずれにせよ、こうして全世界的に若者だけでなく中高年もスマホを使うようになり、全世代的なスマホ普及で促進されたネット利用とソーシャルメディア利用が各国の社会情勢や政治情勢を大きく変化させている。ピューリサーチセンターのこの調査もじつはこの点を明らかにするために実施されており、スマホの年齢別の普及状態のデータもそれの前提条件として掲げらたものだったのである。本題の方は以下の図録で取り上げた。
  • ソーシャルメディア(SNS)の年齢別使用状況(主要国比較)(図録6256
  • ソーシャルメディア(SNS)は民主主義にとって「両刃の剣」(主要国比較)(図録6258
  • ソーシャルメディアは異文化への寛容さの助けか妨げか(主要国比較)(図録6258d

(2023年1月19日収録、4月25日SNS利用率の図を追加)


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