日本の広告費の総額や内訳については、我が国を代表する広告代理店である電通が集計し公表しており、政府の統計集などにも、これが採用されている。広告主の業種別広告費は図録5650e参照。

 2022年の日本の広告費は、7兆3,176億円であり、GDP比1.24%であった。広告費がGDPと比例して増減するのは当然であるが、間接費としての役割から、またご祝儀相場的な側面をあわせもつ広告というものの性格上GDPよりも振幅が激しくなると考えられる。

 バブル期に1.24%まで大きく上昇した対GDP比は、バブル経済崩壊後の景気低迷で94〜95年には1.03%まで落ち込んだ。

 その後は、ゆるやかな回復後、横ばい状態にあったが、2008年以降、世界的な経済低迷に突入したことにより3カ年にわたって再び大きく落ち込んだ。

 その後、11年微減、12年やや回復となった。12年の回復は前年大震災の影響による自粛からの反動、及び同年夏のオリンピックの影響があろう。13年も対GDP比が上昇したのは2014年「4月の消費税増税前の駆け込み需要を取り込もうとする戦略もあり、広告を出す動きが13年後半にかけて活発になった」(東京新聞2014.2.21)ためもある。

 2015年に落ち込んだ対GDP比はその後ゆるやかに回復している。

 2019年には、インターネット広告費の一部として「物販系ECプラットフォーム広告費」、またプロモーションメディアの一部として「イベント」領域を新たに追加推定しているので、その分、伸びが大きく見えている。前年同様だとすると広告費は6兆6,514円、対GDP比1.20%であり、見かけほど、大きく広告費が伸びている訳ではない。

 2020年には新型コロナ感染症の影響で総広告費が対前年比88.8%と大きく落ち込み、対GDP比はリーマンショック時を超えて、新基準になって以降の最低となった。

 2021年は広告費も回復し、対GDP比も1.23%と一昨年並みとなった。22年は北京冬季五輪、参院選でやや上向いたが、23年は反動で下がった。

 媒体別には、新聞、テレビなどのマスコミ広告費と折り込みチラシ、車中広告やダイレクトメールなどのプロモーションメディア広告費、及びインターネット広告費(モバイル広告を含む。05年からサイト制作費等を含めた値が公表。)に大別されるが、テレビの増加とその後の横ばい、最近ではインターネットの急増、そして新聞広告費の縮小傾向が目立っている(長期推移は下図)。


 90年当時はテレビと新聞は広告費でそれほどの違いはなかったが、最近では、テレビが新聞の4倍近くの広告費となっており、対照が著しい。

 もっともテレビも10年はやや回復したが09年まで5カ年連続して広告費を減少させており、同じく連続して広告費を減少させている新聞、雑誌、ラジオとともにマスコミ広告費は総じて退潮が否めない。2011年のテレビ広告費は0.5%減と減少幅が小さかったが、これは震災後に企業が広告を自粛した反面、ACジャパンが穴埋めするかたちとなったためである。

 2004年の特徴として報じられたのは、増加を続けるインターネットの広告費が、ブロードバンドの普及を背景に、1,814億円とはじめて既存メディアのラジオ広告費の1,795億円を上回ったことであった。折しも、インターネット・メディアのライブドアがラジオ放送会社であるニッポン放送に対して、M&Aを仕掛け、ニッポン放送を含むフジ・サンケイ・グループ全体が防御措置を講じていたが、その背景をなす経済環境の変化をあらわしている。

 その後も引き続き、インターネット広告費が急増しており、2007年には6,003億円と雑誌広告費を抜き去り、2009年には7,069億円と新聞広告費の6,739億円を上回り、2014年にはついに1兆円を超えている。

 2016年はインターネット広告が三年連続で二桁台の伸びとなり、広告費全体に占める割合が20.8%とはじめて2割を超えた。「ネットの掲載内容を消費動向に合わせて改善できる「運用型広告」の需要が増えたのが要因。技術革新により対象者の興味に沿った広告を配信できるようになったことも成長につながっているという」(東京新聞2017年2月24日)。テレビ、ラジオの広告費の伸びも「人気があるネットで配信するサービスなどが貢献した」(同)ので、総じてネット関連の伸びである。


 さらにインターネット広告の増加は止まるところを知らず、2019年には、ついに、プロモーションメディアやテレビメディアを上回り、広告費全体に占める割合も30.3%とはじめて3割を超え、広告の主役の座を占めるまでになっている。

 2020年にはほとんどのメディアで広告費が大きく落ち込む中(特に外出自粛の直撃をくらっているのはプロモーションメディア)、インターネットだけは伸び続けており、デジタル化の流れが一層目立つかたちとなった。

 そして、2021年にはついにインターネットが、新聞、テレビ、雑誌、ラジオを合わせた「マスコミ四媒体」を初めてこえるに至っている。

 国民の平均メディア利用時間が新聞をインターネットが大きく上回っており、こうした変化が広告費にも影響していると考えられる(図録3960参照)。

 新聞が凋落しインターネットが伸びている状況は日本だけでなく米国でも同じである(下図参照)。ここでは年次が1949年からと長い期間にわたっており、テレビが登場する前の新聞の圧倒的シェアが示されているだけに新聞の凋落がそれだけ際立って見える。また米国ではインターネットがテレビをも上回っている状況が示されており、日本の将来を指し示しているとも考えられる。

 インターネット広告費の日米比較について図録5655参照。

 なお、英エコノミスト誌によると英国の場合も2009年にインターネット広告費がテレビ広告費を上回っている。「英国では、テレビ広告比率の人為的規制の影響があるものの、テレビ広告費をオンライン広告費が今や上回っている。」(The Economist May 1st 2010)


(2005年3月19日収録、12/23コメント追加、2006年2月21日・2007年2月21日、2008年2月21日更新、2009年2月24日更新、2010年2月23日更新、5月19日英国情報追加、2011年2月24日更新、2012年2月23日更新、12月24日米国メディア別シェア推移追加、2013年2月22日更新、2014年2月21日更新、7月9日NHK年鑑による長期推移・NHK受信料収入の図を追加、2015年2月24日更新、2016年2月24日更新、2017年2月24日更新、2018年2月25日更新、12月8日旧系列対GDP比再計算、2019年3月2日更新、3月19日85〜89年データ付加、2020年3月11日更新、2021年2月26日更新、2022年2月25日更新、2023年2月25日更新、2024年2月28日更新。3月2日インターネット広告費比率の推移図)


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