アジア新興国の都市住民から見た日本製品のイメージについては、図録5367で、他国製品と比較したグラフを掲げた。ここでは、同じ博報堂の調査結果により、中国人と韓国人が、日本製品をはじめ各国製品に対してどういうイメージをもっているかについてふれた。日本人についての同様の調査結果についても同時に掲げた。

 中国人(上海と北京の平均)から見たイメージでは、「高品質な」という側面では、日本製品はその他の各国製品を圧倒しているが、それ以外の属性では、全て次点以下であり、とくに「活気や勢いを感じる」では、最下位となっている。

 中国人の目から見て、日本製品と比較してイメージが良くなっているのは、韓国製品である。「カッコイイ・センスがいい」、「楽しい」では、世界1との評価となっている。また、「活気や勢いを感じる」や「価格に見合う価値がある」では、自国製品に次いで韓国製品の評価が高い。中国では韓国製品の評価がこのように高いということは、日本人にはなかなか気づきにくいことかと思われる

 日本人の各国製品に対する評価についても参考として掲げているが、これを見ると、日本人の韓国製品に対する評価は中国製品並みに低い。おそらく、日本市場で、一時期、家電製品などで、安かろう悪かろうの韓国製品が広く出回った影響であろう。中国市場への韓国製品の投入はもっと満を持したものであったに相違ない。

 韓国人から見たイメージでは、「高品質な」とともに、「明確な個性や特徴がある」、「楽しい」でも日本製品が世界1という評価となっている。「カッコイイ・センスがいい」では欧州製品に次いで高い評価となっている。中国人と同様「活気や勢いを感じる」や「価格に見合う価値がある」では、自国製品を世界1と見ている。

 なお、韓国人は日本人と同様中国製品に対しては、否定的な見方が強い。

 日本人の各国製品に対する評価で特徴的なのは、米国製品の品質についての見方である。中国人も韓国人も米国製品の品質に関して日本製品よりは低いものの、欧州製品などと比べて特段低いとは感じていない。ところが日本人は自国製品や欧州製品に比べて格段に低いイメージしか持っていない。こうしたあたりに世界の中でも特に敏感な日本人の品質感覚がうかがえるともいえよう。他方、「楽しい」や「活気や勢い」では米国製品を世界1としている。米国のものは面白さではピカ一だけれどすぐ壊れたり何が混ざっているか分からないよね、といった印象であるように考えられる。こうした米国製品に対するイメージは中国人や韓国人にはないようである。

 中国人と日本人の各国製品に対するイメージの違いでもっとも目立っているのは、実は、中国人は各国製品それぞれについて、それほど差をつけて見ていないのに、日本人は属性別、各国製品別で、いちいち評価が大きく異なる点である。日本人は一般の国際アンケート調査では他国と比べあいまい回答が多く(例えば、図録8598「米国を世界はどう見ているか」)、また他国に比べ自国に対する控えめな評価が目立つ(例えば、図録8016「日本を世界はどう見ているか」)。それだけに、各国製品イメージでは他国よりもキッパリとした回答をし、また自国製品に対し高い評価をしているのが印象的である。こうした評価のメリハリの点では、韓国人の場合は日本人と中国人の中間に位置している。

 中国人の各国製品に対する評価の微温性は、現段階の中国人は、どの国の製品だからといって余りこだわっていないからであろう。どの国の製品でも良いものは良く、悪いものは悪いといった感覚なのではあるまいか。せいぜい自国製品は格好良くはないが安くてお買い得といったイメージをもっているだけなのではないか。ブランドはもともと家畜の焼印のことであるが、中国は、国ブランドイメージがなお定着しておらず、製品に製造国別の焼印が押される前の段階だといえる。

 その中で、品質についてだけはやや例外的であり、日本製品への高評価が目立っている。これをどう生かしていけるかが重要な課題であろう(図録5367参照)。訪日中国人観光客が他の国の訪日客と比較して、日本国内で膨大な買物をして帰る事例は、こうした中国人の感覚を抜きにしては理解できないであろう(図録7218参照)。

 ところで、上記のように中国人と日本人とでは、どの国の製品かで差をつけて見ている程度に大きな違いがある。これを「国ブランドへのこだわり度」として指標化してみよう。

 アジア各国国民の各国製品へのこだわり度の違いは、グラフの凸凹度、すなわち、5ヵ国製品、6属性のイメージについての合計30項目の回答率のばらつき(標準偏差−平均値からの乖離の平均)で測ることが可能である。これは、属性間に違いがあるか、また同じ属性でも5カ国の製品に違いがあるかを総合したこだわり度指標と考えることができる。指標を比較してみると日本は23.0%、中国は9.7%となる。さらに、この両国を含め13カ国で比較して見ると(下図参照)、日本人のこだわり度が最も高く、インド人のこだわり度が最も低いという結果になっている。インド人は中国人以上にどの国の製品かにはこだわっていないのである。順位を見れば分かる通り、各国国民の国ブランドイメージへのこだわり度は、ほぼ、経済の発展度やそれと比例した市場の成熟度に比例していると考えられる。


 ここでとりあげているアジア等14都市とは、上海、北京、ソウル、香港、台北、シンガポール、バンコク、ジャカルタ、クアラルンプール、マニラ、ホーチミン、デリー、ムンバイ、モスクワである。

(2010年10月27日収録)


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