日本の政権が1年ごとに存廃を繰り返し、不安定な政権運営を余儀なくされている点がいかに特殊な状況かをOECD各国の過去20年間の政権数のグラフから明らかにした。

 過去20年間の政権数(number of governments)は、日本が19個と2位のポーランド、イタリアの14個をはるかに上回っている。日本はこの20年間、ほとんど毎年1個政権が生まれている勘定となる。

 主要国では、大統領制(行政の責任を大統領がもっぱら負う場合の大統領制)を採用している米国が6個、韓国が5個と非常に少なくなっている。この他、行政に首相が責任を負う国では、ドイツで7、英国で8、フランスで10と日本の半分かそれ以下である。

 OECD報告書(Government at a glance 2011)がこの図(若干グラフ形式を変更しているが)を掲げているのは、財政再建に取り組む先進諸国の努力を分析するに当たって、政権数の頻度というより、むしろ連立政権の多さを重視しているからである。以下はOECD報告書の記述である。

「ほとんどの改革(財政改革など)は政権の通常の存続期間を越える複数年次にわたるものである以上、政党間の連立によって展開され、支持されるような改革ほど継続が可能であるといえる。改革の頓挫は2つの理由によっている。1つは、改革への政治的な意欲が低下する場合、もう1つは、新しく選出された政府が前政府の改革をひっくり返す政治的決定を下す場合である。財政改革や年金改革をめぐるOECD諸国の経験についてのケーススタディが示すところによると、諸改革を展開するに際して複数の政党や派閥がかかわる政府の方が時間を超えて継続する再建策を実行に移す可能性が高い。OECD諸国の政権の中には、連立を形成する伝統の強い国と弱い国とがある。」

 確かに米国や韓国のような大統領制の国を除いても、英国やカナダのように連立政権が少ない国とドイツやイタリアのように連立政権が多い国とがある。日本は19政権のうち15が連立政権であり、連立政権である比率は高くなっている。

 報告書は、長期的な改革についての政党間合意があり、それに基づいて連立政権が組まれる場合には、単純に政党の政権交代が繰り返される場合よりも財政改革や社会保障改革が実現しやすいことを述べている。しかし、日本のように、そうした政党間合意がないまま、ただ多数派を形成するため連立を繰り返している場合は、それどころの状況ではないといえる。日本で社会保障改革や財政改革について自民党と民主党が長期展望について実りのある議論をしてこなかったことが、改革について国民の理解を得ることの出来ないまま推移せざるを得ない現在の政府の苦境を招いているといえよう。

 なお、OECD報告書では、この図は図録5212の図とセットで分析されている。

 データの対象国は政権数の少ない順に以下の33カ国である。メキシコ、チリ、韓国、ルクセンブルク、スペイン、米国、ドイツ、スロバキア、フィンランド、ギリシャ、アイルランド、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、英国、オーストリア、ベルギー、カナダ、ハンガリー、スロベニア、スウェーデン、オーストラリア、デンマーク、フランス、アイスランド、イスラエル、ニュージーランド、チェコ、エストニア、トルコ、イタリア、ポーランド、日本。

(2011年9月27日収録)


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