世界と比べて日本の都市では、木造家屋が多いため、火災(火事)による被害は大きいのであろうか。この点を見るため、消防白書から日本の主要都市15(2005年)、世界の主要都市22(2004年11、2005年11、重複あり)の人口100万人当たりの火災による死亡者数をグラフにした。

 必ずしも国ごとの火災の定義が同一でないこと、また、年によって大規模火災が発生するなどして単年度の比較には注意を要することを考慮しなければならないが、これだけの都市数を比較すれば大体の傾向は明らかになる。

 日本の都市の火災被害は、一定規模以上の犠牲者が各都市で必ずといってよいほど発生している点からは木造家屋が多い故の宿命的なものともいってよいが、犠牲者数が、特段、世界の主要都市と比べて多いわけではない点からは防災と消防の努力が功を奏しているとも言えるのではないだろうか。

 世界の都市で特段に火災の被害者が多い場合は、大火災が発生したためと考えてよいだろう。例えば、2004年末の12月30日、アルゼンチンのブエノスアイレスにあるディスコ"レプブリカ・デ・クロマニヨン"で大規模な火災が起き、市保健局の発表によると、逃げ遅れた客ら少なくとも188人が死亡、700人以上がけがをしたという。

 なお、国別の国際比較では、日本の火事による死亡者数は人口10万人当たり1.16人であり、世界192カ国中125位と少ない方である(WHOの国際死因統計による2002年の値)。ちなみに世界第1位はインドの14.0人となっている。火災件数の比較ではないので、火事が多いか少ないかとは別のデータである。火事による被害を食い止める力、すなわち消防力も関係しているからである。

 グラフに掲げた諸都市は、日本は、札幌、仙台、さいたま、千葉、東京23区、横浜、川崎、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、北九州、福岡である。世界は2005年が北京(中国)、ソウル(韓国)、シンガポール(国)、台北(台湾)、ニューサウスウェールズ州(豪州=オーストラリア)、コペンハーゲン(デンマーク)、パリ(フランス)、ベルリン(ドイツ)、ロンドン(英国)、モントリオール(カナダ)、ロサンゼルス市(米国)、2004年が大邱(韓国)、香港(中国)、シンガポール(国)、コペンハーゲン(デンマーク)、ギリシャ(国)、北アイルランド(英国)、モントリオール(カナダ)、ダラス(米国)、ヒューストン(米国)、ブエノスアイレス(アルゼンチン)、南オーストラリア大都市圏である。

(2008年10月6日収録)


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