2010年、沖縄、奄美では平年よりそれぞれ2日、4日早く5月6日に梅雨入りしたが、平年なら梅雨入りしていてもおかしくない九州〜近畿でも晴天が続きいっこうに梅雨入りしそうにない。「気象庁によると、上空の偏西風が大きく蛇行し、日本列島付近に寒気が入りやすくなっているのが原因という。各地の梅雨入りは平年より遅れそうな情勢だ。」(毎日新聞2010.6.5)

 図には、気象庁データにより、梅雨期間における降水量合計値(平年値)と梅雨入りと梅雨明けの月日(中日平年値)を掲げた。

 梅雨は東アジア特有の気象現象であり、北海道を除く日本列島、朝鮮半島南部、中国中南部沿海部、台湾などで5〜7月頃雨の日が続く気象を指す。日本では、奄美、九州南部で大雨を降らすことが多く、東北部では降雨量がそれほど多くない。梅雨末期の集中豪雨は水害などの災害を引き起こすことも多いが、一方では、稲作などについて日本の大切な水供給源となっている。

 降らなければ困るが降るとうっとうしいのが梅雨である。一年に一回はこの時期を通過しなくてはならない。梅雨の時期を好む日本人は少ない(図録4355参照)。梅雨は旧暦では五月にあたることから五月雨(さみだれ)ともいう。

 さみだれのかくて暮れ行く月日哉 蕪村

 梅雨の原因についてはアジア・モンスーンの余波で説明することが多い。夏のモンスーン風がマダガスカルあたりからインドに達し、ヒマラヤ山脈にぶつかって大雨を降らせるが、一部が山脈から東へフィリピン方面へ曲がり、一部が山脈の低いところを乗り越え、湿舌となって東アジアに到達する。これが梅雨前線にぶつかって雨を降らすと考えるのである。「湿舌の経路からみて、(豪雨は)西日本と朝鮮に多い(中略)。東日本は、いわば、フィリピン諸島の蔭になるために、湿舌の到来は少ない。」( 鈴木秀夫「風土の構造 」大明堂(1975))

 アジア地域におけるモンスーンの影響については図録4335(世界各地の気候)参照。

代表地点における梅雨期間の降水量および梅雨入り・梅雨明け(平年値)
地域名 代表地点 梅雨期間降水量
平年値合計(mm)
梅雨入り 梅雨明け
沖縄 那覇 234.7 5月 8日ごろ 6月23日ごろ
奄美 名瀬 511.3 5月10日ごろ 6月28日ごろ
九州南部 鹿児島 540.4 5月29日ごろ 7月13日ごろ
九州北部 福岡 338.8 6月 5日ごろ 7月18日ごろ
四国 高松 201.7 6月 4日ごろ 7月17日ごろ
中国 広島 327.9 6月 6日ごろ 7月20日ごろ
近畿 大阪 296.6 6月 6日ごろ 7月19日ごろ
東海 名古屋 312.7 6月 8日ごろ 7月20日ごろ
関東甲信 東京 288.2 6月 8日ごろ 7月20日ごろ
北陸 新潟 276.4 6月10日ごろ 7月22日ごろ
東北南部 仙台 243.8 6月10日ごろ 7月23日ごろ
東北北部 青森 141.6 6月12日ごろ 7月27日ごろ
(注)梅雨の入り・明けには平均的に5日間程度の遷移期間があり、その遷移期間のおおむね中日をもって「**日ごろ」と表現した。降水量は各地域の代表的な地点の梅雨について、入りの遷移期間のおおむね中日から明けの遷移期間のおおむね中日の前日までの合計値(日別平滑平年値)である。
(資料)気象庁「平成20年の梅雨入り・明けと梅雨時期の特徴について」

(2010年6月6日収録)


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