ここでは過去8回の冬季五輪大会における主要国のメダル獲得数の推移を示した。

 日本のみの各大会の金、銀、銅、それぞれのメダル獲得数とメダル獲得選手については図録3987参照。バンクーバー大会の各国詳細は図録3987p参照。ソチ大会の各国詳細は図録3987n参照。ピョンチャン大会の各国詳細は図録3987l参照。

(ピョンチャン大会)

 ピョンチャン大会については、ノルウェーがメダル総数39個と2010年バンクーバー大会の米国の37個を上回って最高記録を更新した。金メダル数も14個とノルウェーがドイツと並んで最多タイとなっている。

 上位国の中では、ノルウェーと並んで、ドイツ、カナダ、オランダなどが好調だった。

 連続して4大会でメダル総数1〜2位だった米国が今回4位と振るわなかった点が目立っている。組織的なドーピングで国としての参加が認められなかったロシア(個人参加)も今回メダル数を減らし、特に金メダルは2個に止まったのが目立っている。

 東アジアでは、日本と自国開催の韓国がメダル数を延ばしたが、次期開催の中国は予想外にメダルが少なかった。

(ソチ大会)

 ソチ大会については、メダル総数、及び金メダル数で、開催国ロシアがともに最多となった点がまず目立っている。過去7大会でロシアがトップだったのは、リレハンメル大会金メダルのみである。これが、ロシアではじめての冬季五輪にプーチン大統領を先頭に国運の浮上をかけて取り組んだ結果であることは言うまでもなかろう。

 なお、国ぐるみのドーピングによりロシアは金銀それぞれ2個ずつ、計4個のメダルが剥奪されることとなったので、メダル総数はなお最多であるが、金メダルは最多タイとなった。

 これと並んで、スピードスケート男女12種目のうち8種目を制し、23個のメダルを取ったオランダの活躍が際立った。これは、もともと冬に凍結した運河はアイスリンクになり、スケートはオランダ人の娯楽だったという基盤に加え、空気抵抗が大きいソチの低地リンクへの対応、カーブ技術を磨き続ける日本など他国の練習を積極的に導入といった努力が稔ったものとみなされている。

 オランダの躍進のあおりで、本来、特異の筈の日本のスピードスケートは、メダルなしに終わった。日本のスピードスケート界の閉鎖性、すなわち選手が、所属別に編制され、相互交流や海外交流に乏しくなっていて、情報戦にも遅れを取っている点が指摘される(毎日新聞2014.2.24)。

 このほか、ノルディック・スキーの本場ノルウェーも、距離やバイアスロンなどゆかりの競技でメダルを量産し、前回までの強化策の効果が持続するカナダとともに、メダル数上位を占めた。

(バンクーバー大会)

 メダル総数では米国が過去2回2位であったがバンクーバーではソルトレークシティー五輪のドイツの36個を上回る冬季五輪史上最多となる37個を獲得し1位となった。首位を続けていたドイツは米国に抜かれ2位となった。

 徐々に獲得数、順位を上昇させていた開催地カナダは今回順位は前回と同じ3位、メダル総数は26と増加し過去最多となった。また金メダル数14で出場国1位となったが、これは史上初めてである。報道によれば「05 年から始まった官民一体の選手強化キャンペーン「オウン・ザ・ポディウム(表彰台 を勝ち取れ)」で約200選手を対象に1億1700万カナダドル(約99億4500万円)の強化費を投じた成果が出た」(毎日新聞2010.3.1夕)。

 アジア勢は、日本が長野の10個からソルトレーク2個、トリノ1個とふるわなかったが、今回は5個とやや回復した。中国と韓国は徐々にメダル獲得数を増やしていたが、今回は、韓国が金メダルは前回と同数であるがメダル総数は14個と躍進し、中国は、逆にメダル総数は前回と同じであったが金メダルは5個と躍進した。

 日本のトリノの1個は金メダル(荒川静香)でフィギュアスケート女子という冬季五輪の華ともいうべき種目であったので数の少なさを多少カバーしていた(「フィギュアスケート日本女子のオリンピック最高成績の推移」は図録3989参照)。今回はメダル総数は回復したが金メダルがなく、さびしい結果となった。

 その他の国では、オーストリアと次回ソチ五輪開催地のロシアがメダル総数、金メダルともに大きく減少させているのが目立つ。報道によれば、ロシアの場合、「ドーピング(禁止薬物使用)の事前検査で有力 選手の出場が停止になったことが影響したとみられる。」(毎日新聞2010.3.1夕)

 冬季五輪開催に当たってメダル予想の報道がさかんだった。選手の力量ではなく、人口、国民所得、気候、政治制度、開催地への近さ、スポーツ文化の要素から経済学的手法で五輪のメダル獲得数を予測し的中率が高いと評判の米コロラドカレッジのダニエル・ジョンソン助教授によるとバンクーバー大会におけるメダル獲得数予測は以下であった(東京新聞2010.2.12)。

@カナダ:27個(うち金5個)
A米国:26(金5)
Bノルウェー:26(金4)
Cオーストリア:25(金4)
Dスウェーデン:24(金4)
Eロシア:23(金8)
Fドイツ:20(金7)
J中国:12(金2)
K韓国:11(金4)
日本:判定不能「いずれの要素にも変化なく、多くて2〜3個」

 この予想と比較すると米国、ドイツが予想以上に健闘し、カナダは金メダルで予想以上であったといえる。日本も予想よりは健闘したといえる。

(対象国)

 なお、図で取り上げている国はドイツ、米国、カナダ、オーストリア、ロシア、ノルウェー、スウェーデン、スイス、韓国、イタリア、中国、日本、オランダの13カ国である。

(2010年2月12日収録、3月2日更新、2014年2月24日更新、2018年2月23日ロシアのメダル剥奪後のデータに変更、2月25日図の更新、2月26日コメント更新)


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