金メダル獲得国以外 
   

 2021年開催のオリンピック東京大会における各国のメダル獲得数をグラフにした。このデータは新聞各紙、Yahooサイト、グーグルサイトでも掲載されているが、このサイトでは、人口規模の割に金メダルを獲っているのか、獲っていないのかが分かるような情報提供となっている点が他と異なる。

 金メダル数は7月26日の終了段階では卓球混合ダブルスで優勝したため日本が8個でトップになり、翌27日の終了段階でも柔道とソフトボールでさらに金を追加し10個、翌28日の終了段階でも競泳、柔道、体操でさらに金を追加し13個と4日連続で単独トップを保持した。

 翌29日も柔道でさらに金2つを追加し金15個となり一時単独トップに達したが、同日の終了段階間際卓球女子で中国が金を取ってやはり15個に達したため、トップタイにとどまることとなった。

 そして30日〜31日の金メダル数は中国を下回り、米国を上回る2位となった。また、その後、8月1日〜7日には中国、米国に次ぐ3位、8月8日には米国、中国に次ぐ3位となった。

 最終的に日本は史上最多だった前回2016年リオ大会の41個(金12、銀8、銅21)を大幅に上回る58個(金27、銀14、銅17)のメダルを獲得した。

 リオ大会での日本の金メダル数は12個、6位で、日本の上には、27個で2位の英国、19個で4位のロシア、17個で5位のドイツがいた。こうした欧州勢は、新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウン(都市封鎖)で練習や合宿がままならず、調整に苦しんだためか、東京大会では、それぞれ、22、20、10個と大きく減少か、横這いだったので、金メダル数を増やした日本は一気に3位に浮上したのである。

 米国の金メダル数は3大会連続で、またメダル総数は8大会連続でトップの座を守ったが、金メダル数そのものは陸上競技の低迷などで前回リオ大会の46個から39個へと数を大きく減らした。これは、昨春、コロナ下で米国五輪代表の強化拠点であるコロラド州のトレーニングセンターを一時閉鎖。選手たちの自主トレーニングに依存する時期が長引き、強化戦略が狂ったためともいわれる(毎日新聞2021.8.8)。

 こうした意味では、新型コロナの影響度の欧米と日本との格差が日本の好成績にむすびついた側面も否定できない。

 人口規模対比の金メダル数(人口調整金メダル数)は、現在のところ、人口6万2千人のバミューダ諸島の女子トライアスロン1個が2,031個に値し、首位となっている。次位は、陸上男子400m、女子400mで金2個を獲得したバハマの644個相当、3位はラグビー、ボート、カヌーなどで7個の金を獲得したニュージーランドの184個相当である。

 主要国の人口調整金メダル数を比較すると、人口13億人の中国は金メダル数は米国に次ぐ2位だが人口調整金メダル数では3個とブラジルやイラン、トルコ並みに非常に低くなっている。国力の充実はまだまだだと中国自身感じていよう。

 日本の調整メダル数は米国やロシア、フランス、ドイツ、イタリアを上回ったが、英国、オーストラリア、オランダよりは低くなっており、ずば抜けて多いわけでもない。

 なお、今回金メダル6個と不振だった韓国も人口調整金メダル数はほぼ米国並みであり、特段に少ないわけではない。また、ベラルーシ大統領がメダルが少ないと額に青筋を立てたのが話題となったが(コラム参照)、金メダルを1個獲得しており、これは人口調整では13個相当とドイツ並みなので怒る必要はないだろう。

 過去のオリンピックにおける各国メダル数については以下の図録を参照されたい。これらは大会終了時の結果なので下表の最新時点でのIOCデータと異なっている場合がある。

前回リオ大会(図録3983v
2回前ロンドン大会(図録3983z
3回前北京大会(図録3984

東京大会までの夏季五輪金メダル数の推移
東京
順位
国名 金メダル数 金メダル数ランキング
2000
シドニー
2004
アテネ
2008
北京
2012
ロンドン
2016
リオ
2021
東京
2000
シドニー
2004
アテネ
2008
北京
2012
ロンドン
2016
リオ
2021
東京
1 米国 37 36 36 46 46 39 1 1 2 1 1 1
2 中国 28 32 48 38 26 38 3 2 1 2 3 2
3 日本 5 16 9 7 12 27 15 5 8 11 6 3
4 英国 11 9 19 29 27 22 9 9 4 3 2 4
5 ロシア 32 28 24 20 19 20 2 3 3 4 4 5
6 オーストラリア 16 17 14 8 8 17 4 4 6 8 9 6
7 イタリア 13 10 8 8 8 10 5 8 9 8 9 7
オランダ 12 4 7 6 8 10 8 18 10 12 9 7
ドイツ 13 13 16 11 17 10 5 6 5 6 5 7
フランス 13 11 7 11 10 10 5 7 10 6 7 7
11 カナダ 3 3 3 2 4 7 21 20 19 27 19 11
キューバ 11 9 3 5 5 7 9 9 19 15 17 11
ニュージーランド 1 3 3 6 4 7 37 20 19 12 19 11
ブラジル 0 5 3 3 7 7 53 16 19 22 13 11
15 ハンガリー 8 8 3 8 8 6 12 12 19 8 9 15
韓国 8 9 13 13 9 6 12 9 7 5 8 15
17 ケニア 2 1 6 2 6 4 28 40 13 27 15 17
ジャマイカ 0 2 5 4 6 4 53 26 14 17 15 17
チェコ 2 1 3 4 1 4 28 40 19 17 39 17
ノルウェー 4 5 3 2 0 4 17 16 19 27 60 17
ポーランド 6 3 4 3 2 4 14 20 16 22 28 17
(注)日本の長期推移は図録3980参照。2021東京のROCはロシアにカウントした。
(資料)リオ以前は国際オリンピック委員会(IOC)サイト(2021.8.9)

 以下、区切り線までは毎日新聞(2021.8.8)による各国の結果である。

◇米国、8大会連続トップ

 米国は113個(金39、銀41、銅33)のメダルを獲得し、メダル総数で8大会連続でトップの座を守った。女子選手の活躍が目立ち、金メダル数は競泳で5冠を達成したドレセルら男子選手の16個を上回る23個。メダル総数は41個だった男子よりも多く過去最高の66個で、3大会連続で女子が上回った。

 体操ではリオデジャネイロ五輪4冠のバイルスが精神的な理由から個人総合決勝などを欠場したものの、その個人総合を五輪初出場のリーが制するなど新たな力も台頭。レスリングは、ストックメンサが同競技で黒人女性初の金メダリストになるなど過去最多の4個のメダルを獲得した。

 一方で、金メダルに限れば2008年北京五輪の36個以来、3大会ぶりに40個を下回った。これまで無類の強さを見せてきた陸上は、7個にとどまった。男子は5大会ぶりの金を狙った400メートルリレーで予選敗退と不覚を取り、100メートルでも米国勢4大会ぶりの王座奪還を逃した。

 昨春、コロナ下で米国五輪代表の強化拠点であるコロラド州のトレーニングセンターを一時閉鎖。選手たちの自主トレーニングに依存する時期が長引き、強化戦略が狂ったことをうかがわせた。

◇中国、卓球で悔しさにじませ

 金メダル数で前回の2016年リオデジャネイロ五輪で3位に終わった中国は、国外開催の大会で過去最大規模となる777人の選手団を編成して東京に臨み、2位に返り咲いた。12年ロンドン五輪に並ぶ38個とし、リオから12個増やした。

 けん引したのは、「お家芸」の重量挙げと飛び込みだ。ともに金メダル7個を獲得し、これまで通りの強さを発揮した。前回のリオ五輪で不振に終わった競技の復活もあった。金メダルゼロだった体操は、金3個を獲得。同じく前回ゼロに終わったバドミントン女子もシングルスで金メダルを取り返したほか、いずれも金メダル1個に終わった射撃が4個、競泳が3個と上積みに成功した。

 一方、近年の五輪で金メダルを独占してきた卓球では、混合ダブルスで日本に敗れて国内に衝撃が広がった。国営通信の新華社は中国卓球界の勢いに「急ブレーキをかけた」と伝え、悔しさをにじませた。東京大会から追加された五つの新競技では金メダルなし。空手の銀1個、銅1個を獲得したのみに終わった。国際オリンピック委員会(IOC)が若者に人気のある競技にかじを切る中で、新競技に今後どう取り組んでいくかが問われそうだ。

◇国旗・国歌なしのROC

 ロシアは組織的なドーピング問題の制裁で、東京五輪への選手団の派遣が除外された。略称はロシアの「RUS」でなく「ROC(ロシア・オリンピック委員会)」とされ、国旗や国歌の使用も禁止された。

 ドーピングの違反歴や疑惑がない選手だけが個人資格で出場が認められたが、それでも300人以上がエントリーした。今大会のメダル総数は71個で米国、中国に次ぐ3位。56個だった2016年リオデジャネイロ五輪は英国に抜かれて4位だったが、今大会は巻き返した。金メダル数も20個で前回の19個を上回った。

 競技別では「王座奪還」が目についた。体操の団体総合では「ロシア勢」として男子は6大会ぶりに頂点に立ち、女子も7大会ぶりの金メダルに輝いた。ドーピング違反でリオ五輪では特例の1人を除いて出場できなかった陸上競技でも金を含む複数のメダルを獲得した。

 ロシア選手団の制裁期間は22年12月までで、北京冬季五輪も対象になる。引き続き、世界から厳しい視線が注がれる中での五輪出場となる。

◇長期的強化が実った英国

 2016年のリオデジャネイロ五輪では金メダル獲得数で米国に次ぐ2位に食い込む躍進を見せたが、今回は金メダル22個で4位にとどまった。新競技の自転車BMXフリースタイル・パークなどで金メダルを獲得する一方で、「お家芸」のボートは不振で、1980年モスクワ大会以来の金メダルゼロに終わった。

 12年のロンドン五輪開催が決まった05年からトップ選手の強化を担う公的機関「UKスポーツ」が、国の補助金や宝くじの売り上げをボートや自転車など有望競技に重点配分してきた。その長期的な強化が実り、ロンドン、リオと着実にメダルを増やしてきた。

 新型コロナウイルス感染拡大以前は東京での最多記録更新が期待されていたが、ロックダウン(都市封鎖)が他国に比べて長期となったことなどから、今年6月にはメダル獲得目標数を下方修正せざるを得なかった。それだけに、英国内には60個を超えるメダルを獲得したことを評価する向きもある。

 コロナ禍による減収などの影響もあり、競技によっては強化費が縮減される見込み。24年のパリ五輪に向けていかに戦略を立て直すかが課題になりそうだ。
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◇目標を下回る金6の16位だった韓国(聯合ニュース2021.8.8)

 韓国は金メダル6、銀メダル4、銅メダル10の16位で東京五輪を終えた。金7個以上、10位以内という目標を掲げていたが、金メダル獲得数は1984年のロサンゼルス大会(金6、銀6、銅7)以来の最少に終わった。

 金メダル6個のうち、アーチェリーが4個を占めた。だがアーチェリー以外の金はフェンシング男子サーブル団体と体操男子種目別跳馬の二つにとどまった。韓国の金メダル獲得数は2012年ロンドン大会(金13、銀8、銅7、5位)が最高で、16年リオデジャネイロ大会(金9、銀3、銅9、8位)に続き、東京大会でも減少した。

 お家芸のテコンドーや国際大会で安定的にメダルを獲得してきた柔道の不振が響いた。モントリオール大会で韓国に初めて五輪金をもたらしたレスリングもメダルなし。

 メダル減少とともに過去に五輪金に輝いた朴泰桓(競泳)、張美蘭(重量挙げ)、キム・ヨナ(フィギュアスケート)らのような世界から注目を浴びるアスリートも登場しなかった。
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 なお、3つの国で初の金メダリストが誕生した。フィリピンでは、重量挙げ女子55キロ級で、カタールでは重量挙げ男子96キロ級で、バミューダではトライアスロン女子で歴史の扉が開けられた(東京新聞2021.8.14)。フィリピンの金メダルについてはコラム参照。

【コラム】金メダル狂想曲:フィリピン、台湾、ベラルーシ



 東京新聞(2021.7.30)の上の記事によると、1924年の初参加以来、はじめての金メダルとなったフィリピンでは、金メダルを獲得した女子重量挙げの選手に報奨金や別荘など高額なお祝いが相次ぐなど大変な騒ぎとなっている。

 また、台湾でもオリンピックが異例の盛り上がりを見せている。獲得したメダル数が過去最高の成績となっており、台湾メディアは快挙を大々的に報じている。中でも、バドミントン男子ダブルスで7月31日、台湾ペアが中国ペアを破り、台湾にバドミントンで初の五輪金メダルをもたらしたので、蔡英文総統は自身のフェイスブックに「我慢できずに東京に電話をかけた」と記し、歴史的勝利を自ら祝福したことを明かした(読売新聞2021.8.1)。

 中国チームを破り、金メダルに輝いたバドミントン男子ダブルスの選手、銀メダルを獲得した同女子シングルスの選手らが8月4日に「凱旋帰国」した際には、空港には大勢のメディアやファンが集まり、軍は主力戦闘機「ミラージュ」を派遣し、選手らを乗せた航空機に随伴飛行させ、帰還を歓迎した。一方、テレビ局は、開会式の中継で選手団を「チャイニーズ・タイペイ」ではなく、「台湾です」と紹介したNHKアナウンサーの声を本来の国名で呼んでくれたとして今も繰り返し放送している(時事通信2021.8.6)。

 他方、メダルが少ないと怒りをあらわにする大統領の言動が報じられている例もある。ベラルーシは2008年北京、12年ロンドン、16年リオデジャネイロの五輪で、各10個前後のメダルを獲得しているが、7月31日にトランポリン男子で金を獲得するまでメダルがゼロだった。

 これに対して、強権的で「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ大統領は、昨年8月の大統領選に伴う反政権デモから1年を迎える中、7月29日に「どの国よりもスポーツに資金をつぎ込んでいるのに」メダルがないとはけしからん不満を爆発。ベラルーシの選手に関し、アフリカなどの選手と違って「飢えていない」から、ハングリー精神が足りないと決めつけ、「(外国の選手は)五輪で勝てば何でも手に入るが、負ければパンを探し回らなければならないことを知っている」と述べたという(時事通信2021.8.1)。

 さらにベラルーシについては、過去に政権による市民弾圧を非難したことのある陸上女子の選手がコーチ陣とトラブルになり帰国命令を拒否してポーランドへ亡命するという事態にもなった。

(2021年7月25日収録、以降随時更新、7月30日コラム、8月1〜6日コラム補訂、8月9日更新、8月14日各国事情)


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