NHKの放送文化研究所では1973年から継続して5年おきに、全国の16歳以上の国民5,400人に対する「日本人の意識」調査(個人面接法による)を行っている。刊行されている報告書は「現代日本人の意識構造 (NHKブックス)」。

 ここでは、宗教や信仰に関係することで信じているものの推移をグラフにした。

 日本人が信じているもののなかで最も多いのは「仏」であり、最新年の調査結果では38%となっている。次ぎに「神」が31%で続いている。

 「何も信じていない」人は32%とこれまでで最多となった。

 選択肢の中には、「奇跡」「お守り・おふだの力」「あの世、来世」といったマイナーな項目もあげられているが、これらを信じている日本人は2割以下である。

 1973年以降の変化を追うと「仏」「神」、あるいは「聖書や経典の教え」といった伝統的な信仰対象については全体として信じているとする回答率が低下傾向にある。一方で、「奇跡」「お守り・おふだの力」「あの世、来世」といった素朴宗教的なものを信じる人が2008年まではやや増えていた。

 1993年から98年にかけての一時期に目立っているのは、「何も信じていない」が急増し、他方、「仏」「神」「お守り・おふだの力」「あの世、来世」の各項目への回答がかなり減り、その後、それらが元の水準に戻っている点である。これは、1995年に地下鉄サリン事件など社会を揺るがしたオウム真理教事件が影響しているためと考えられる。宗教的なものを信じることは怖いことだという感覚に日本人全体が襲われたと言ってよい。

 「奇跡」「お守り・おふだの力」「あの世、来世」などを信じるものが一時期増加した理由については、年寄りはそうしたものを信じがちだから高齢化の影響ではと思う向きがあるかもしれないが、それは誤りである。むしろ、若者がそうした非合理的なものを信じる割合が多くなっていて、高齢者は逆にそうしたものを信じる割合が減っている。従って、高齢化の影響で回答者に占める高齢者の比率の拡大がなければ、もっとそうしたものを信じる割合は高くなっていたはずであるのだ。この点については図録2927、あるいは図録3971a参照。

 2013年と2018年は、2回連続で、神仏も奇跡・お守りも全般的に信じる者の割合が低下している。

 「何も信じていない」人は1973年を起点とするとやや減少、1978年を起点とするとほぼ横ばいの傾向にあったが、宗教的な存在すべてで信じるものが減った反面、「何も信じていない」人は2回連続で増加し、オウム真理教事件への反動で高まった1998年のピークを上回るに至っている。

 こうした宗教的存在への全般的無関心とも呼ぶべき状況は何をあらわしているのだろうか。

(2010年8月12日収録、2014年5月20日更新、2019年1月9日更新)


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