(注)建築・土木技術者、情報処理・通信技術者を除く分野の技術者を製造技術者とした。情報処理・通信技術者は2005年までは「情報処理技術者」とされていた。電気・電子技術者は2010年以降「電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く)」と称されている。機械技術者には輸送用機器技術者を含めた。
(資料)国勢調査(職業小分類別集計)


 技術者が技術立国日本の人的基盤であることは言うまでもないことである。ここでは、国勢調査の結果を使って、日本の技術者数がどう推移しているかを見てみよう。

 国勢調査や労働力調査の職業分類(仕事の種類)の一項目である「技術者」は、大分類である「専門的・技術的職業従事者」の下位中分類に位置づけられている。技術者は、この大分類のうち研究者や医療、法務、教育、福祉、芸能・芸術などの専門家ではない生産・建設・情報関連のいわゆる技術者を指している。

 技術者は具体的には、3つのグループ、すなわち、@電気や機械など製造関係の技術者、A建築家など建築・土木関係の技術者、Bプログラマーやシステムエンジニア、ネット技術者など情報通信関係の技術者に大別される。

 国勢調査では技術者という中分類の下に分野別の技術者が小分類として区分されているが、上図では、まず、これをこの3グループに集約したものの推移を技術者総数の推移とともに示し、次に、製造関係の技術者の小分類別の推移を示した。

 3つの技術者グループは時代の変遷に対応して最多グループが移り変わっている。すなわち貿易立国として経済発展をとげていた1990年までは製造技術者が最も多く、次の内需拡大の時代(言い換えるとバブル期に計画されたリゾートなどの建設が進んだバブルの後始末時代であり、同時に景気対策で公共事業がさかんに行われた時代−図録5165、図録2670参照)である2000年までは、建築・土木技術者が最多となり、最後に、ICT時代、あるいは本格的なネット社会の到来(図録3960参照)に対応して2005年以降は、情報通信技術者が最も多くなった。

 技術者総数は、高度経済成長時代、その後のハイテク時代を通じて急増し、1980年までの100万人以下の水準からピーク時の2000年には252万人まで膨らんだ(図録3500参照)。ところがバブル経済の余波がついに沈静化した2000年代の前半には公共事業をはじめとする建設事業の大きな落ち込みと平行した建築・土木技術者の急減により、技術者総数も減少に転じた。その後、2000年代の後半はほぼ横ばいとなっていたが、2010年代前半には、東日本大震災の復興需要、円安による製造業の回復、ネット社会の本格化などが重なって、3つの技術者グループが全て増加し技術者総数も、再度、増加に転じた。建築・土木では建築の技術者が増えている。

 製造技術者は、大きくは、電気と機械に2分される。モノづくり企業が工業高校などから新卒採用する場合、企業の性格に応じて、機械を何人、電気を何人と割り振っていることが多かった(製品技術としてはどちらかに片寄るが製造技術としてはどちらも必要である)。工場経営者の中には、技術者としての幅をもたせるため、採用当初は電気採用の者には機械の仕事をやらせ、機械採用の者には電気の仕事をさせるというような方針を持つものもいた(以上、私の企業ヒアリングの経験などから)。

 確かに数字的にも電気と機械はほぼ同等の水準で推移している。長らく電気が機械を上回っていたが、2010年にははじめて逆転した。電気機械や電子(エレクトロニクス)は生産機能の海外移転が進み、国内生産を比較的保持している自動車産業など機械産業との相対関係が変化したが、ここにはこうした動きが反映されていると思われる(図録5250参照)。2015年には機械技術者が特に増加している点が目立っている。

 なお、技術者が独立する傾向があった点については図録3600参照。

(2015年10月12日収録、2016年7月19日更新、2017年12月15日最新年次抽出詳細集計で更新、2024年2月8日更新)


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