パートタイム労働者の比率を国際比較した図録を掲げた。

 ここでOECDのパートタイム労働の定義は30時間未満、すなわち週5日労働だとすると毎日6時間未満の労働時間の就業者を指す。

 図録の対象国は、日本、韓国、オランダ、スウェーデン、英国、米国、フランス、ドイツ、イタリアである。

 日本は男女ともパートタイマー比率は上昇しており、男女とも、オランダに次ぐ水準となっている。

 オランダのパートターム労働者の多さは世界の中でも目立っている。オランダもかつてはオランダ的出産神話があり出産したら仕事を辞めて子育てに専念するのがいい母親という気風があった。パートタイム形態での女性の労働進出が85年以降急増し、ワークシェアリングによる雇用増と柔軟な労働システムにより経済成長と企業の競争力が達成できたといわれる。その背景としては、伝統的な政労使(政府、労働側、経営者側)の合意システムによるパートタイム労働の認知、そして世界ではじめてだろうといわれる労働時間差差別の撤廃(1996年労働時間法)により、パートターム労働が不利でない社会環境が整備された点をあげることができる(失業率の動向との関連でオランダのパートタイム労働の正規化について図録3080でふれたので参照されたい)。

 日本のパートタイム労働者の増加は、大きく見れば、正社員と非正社員との差別が残る中で、企業のリストラ策の一貫として進行している側面が強く、フリーターの増加、格差の拡大、職業能力の停滞など、将来への長期的なマイナスの可能性を否定できない。

 1980年以降の男女のパートタイム労働者比率の上昇、低下の動きから各国を分類すると以下の4区分となる。
@男女ともに低下傾向
米国
A男性:上昇傾向、女性:一貫して低下傾向
英国、スウェーデン
B男性:上昇傾向、女性:上昇傾向から低下傾向に転化
オランダ、フランス、ドイツ、イタリア
C最近までパート比率が男女ともに上昇
日本、韓国
 ヨーロッパではAかBとなっており、結果として、遅い早いの違いはあるものの、ジェンダーギャップが縮小する方向となっている点が目立っている。

 日本と韓国ではパート比率の水準は男女とも日本の方がずっと高いが、増減の傾向はよく似ている。

 日本と韓国は労働時間の長さ、M字カーブの存在(図録1500)など似た点が多いが、パート労働者比率の水準については大きく違う。これは韓国では女性もフルタイムかつ長時間の労働が多いためである(図録3132参照)。

 パート労働者のうち非自発的パートの占める比率の国際比較については図録3210参照。

(2004年7月16日更新、2006年7月6日更新、2009年9月30日更新:以前の図録に比べOECDの各国定義が揃えられた結果の比較となり日本はオランダに次ぐ世界第2位の高い水準という表現は改めた、2011年9月27日更新、2012年7月11日更新、2015年7月12日更新、2023年8月10日更新)


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