世界価値観調査は、世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較している国際調査であり、1981年から、また1990年からは5年ごとの周回で行われている。各国毎に全国の18歳以上の男女1,000〜2,000サンプル程度の回収を基本とした個人単位の意識調査である。なお、ここで取り上げている2010年期は2010〜2014年の調査であるが、英国、フランスなどこれまでの常連国が含まれていない。これは、世界価値観調査と同じ調査票で実施されている欧州価値観調査が直近の2008〜09年に実施済だからと考えられる。そこで、今回は、欧州価値観調査2008〜09年の結果から6カ国を繰り入れてデータを掲げることとした(。

 ここでは、この調査の結果から、世界58カ国の自殺の許容度についてのグラフを作成した。ここで許容度は、「間違っている(認めない)」から「正しい(認める)」まで1から10のいずれかを選んでもらった結果を加重平均した値である。

 許容度の最も高い国はスウェーデンであり、他方、許容度の最も低い国は、チュニジアである。

 自殺に対して最も許容度が高いのは、スウェーデン、オランダ、フランス、フィンランド、スロベニア、オーストラリア、英国といった西欧諸国であり、最も自殺に厳しい見方をしているのは、トルコ、モロッコ、チュニジアといったイスラム国である。

 日本は58カ国中20位と、やや許容度の高い国に属する。

 それでは、実際の自殺率とこの自殺の許容度とは相関しているのであろうか。下の図には、図録2770と同じ自殺率データをタテ軸にとり、許容度をヨコ軸にとった相関図を掲げた。

 これを見ると、一見、自殺の許容度と実際の自殺率は相関していないように見える。ロシアは許容度は低いが実際の自殺率は高く、オランダ、スウェーデンは許容度が高い割に実際の自殺率は低い。

 ところが、旧ソ連邦諸国や東欧諸国など旧共産圏のグループはいずれも許容度が低い割に自殺率が高い国が多く、儒教圏の韓国、日本も許容度が比較的低い割には自殺率が高い。これらの諸国を取り除いて見てみると、その他の諸国では、地域・民族別のバイアスはあるが、自殺の許容度と実際の自殺率はかなり相関していることが分かる。

 韓国は最近になって急激に自殺率が急上昇したので社会のストレスの強まりでかなり説明可能だが、日本はかなり前から自殺率が高い。そうしてみると、日本の自殺率の高さには自殺に関する日本人の考え方が影響しているととらえられる。図録2770でも引用したWHO精神保健部ホセ・ベルトロテ博士の発言、すなわち「日本では、自殺が文化の一部になっているように見える。直接の原因は過労や失業、倒産、いじめなどだが、自殺によって自身の名誉を守る、責任を取る、といった倫理規範として自殺がとらえられている。これは他のアジア諸国やキューバでもみられる傾向だ」は、日本の自殺率の高さの一側面として、無視できないところをついていると言えよう。安楽死、脱税等を含めた倫理上の許容度との関連における自殺許容度の位置づけについては図録2783参照。

 対象国は許容度の高い順からスウェーデン、オランダ、フランス、フィンランド、スロベニア、オーストラリア、英国、ベルギー、ドイツ、シンガポール、米国、フィリピン、レバノン、スペイン、ニュージーランド、中国、台湾、ポーランド、韓国、アルジェリア、日本、ウルグアイ、メキシコ、イタリア、アイスランド、エジプト、ペルー、ジンバブエ、ナイジェリア、カザフスタン、チリ、マレーシア、キプロス、エストニア、ロシア、キルギス、ウクライナ、エクアドル、クウェート、ルワンダ、イラク、ベラルーシ、ヨルダン、コロンビア、リビア、パレスチナ、ウズベキスタン、パキスタン、ガーナ、イエメン、ルーマニア、アゼルバイジャン、トリニダードトバゴ、トルコ、カタール、アルメニア、モロッコ、チュニジアである。

(2006年6月21日収録、6月25日最後の2行コメント訂正、2013年1月9日更新、2月7日相関図における国のグルーピング改訂、2014年5月24日更新)


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