男女共同参画社会が目指されている中で諸々の女性比率に関心が高まっているので図録としてまとめた。

 ベースとなる指標は人口、就業者であるが、女性の平均寿命の方が多いため人口の女性比率は51%程度と女性の方がやや多い。この比率は他の指標と比べて最も安定している。働いている者(就業者)の女性比率は44.2%であり、女性の社会進出に伴い86年の39.8%から上昇傾向にある。

 産業別に見ると製造業就業者(工場労働者)の女性比率は86年当時はほぼ就業者比率と同じ4割だったが、現在はほぼ3割とかなり低下してきている。アジア等への企業の海外進出に伴い組立型の女性型工業が縮小しているためだと考えられる。もっとも円安の効果か2012年をボトムにして最近やや戻している。

 就業者のうち管理職は比率はどう変化しているであろうか。ここでは管理職の代表として課長相当の女性比率の推移を見ているが、89年の2.0%から18年の11.2%へと5倍以上に拡大しているが、比率自体は他の女性比率と比べてなお非常に低い。

 女性社長の比率については図録5454c参照。

 職業別には、多くの専門職で女性比率が上昇している。小中学校の教員では1990年代に入って女性比率が50%を超えたのが目立っている(もっとも国際的には日本の教員の女性比率は低い方だという点については図録3852参照)。この他、医師、研究者の女性比率も上昇しているが、教員に比べるとせいぜい約2割となおかなり低い(女医比率の国際比較は図録1930a)。

 国民の代表としての活動を見ると、国の審議会等委員、参議院議員、衆議院議員の順で女性比率が高い。国の審議会等委員は86年の6%から10年の33.8%へと急上昇しているのが目立つが、その後やや低下し、また最近上がってきている。各指標の中では最も比率の上昇が大きな分野である。

 衆議院議員は女性比率のレベルは低い。しかし徐々にその比率を高めつつある。05年衆議院選では、小泉首相が自民党の立候補者選定の方針として、全国11の比例代表ブロックに小選挙区と比例区との重複立候補者として1人以上の女性枠を設けることを決定し、その後、郵政民営化法案反対の候補者に対して擁立したいわゆる刺客に女性候補を多く立てる戦略が効を奏した結果、女性比率が、立候補者で13.0%、当選者で9.0%の高さへと上昇した。さらに2009年の政権交代選挙では民主党が若い女性を多く当選させ、女性当選者が54人と1割をはじめて超えた。ところが2012年総選挙では民主党が惨敗し女性比率も7.9%へと低下した。2014年結果から政党別の当選者女性比率を見ると、下表のように、自民、維新、公明は平均以下、民主、共産は平均以上となっている。

衆議院選当選者女性比率(2014年)
  女性当選者数 当選者総数 女性比率
45人 475人 9.5%
自民 25人 291人 8.6%
民主 9人 73人 12.3%
維新 2人 41人 4.9%
公明 3人 35人 8.6%
共産 6人 21人 28.6%
(資料)毎日新聞2014年12月15日夕刊

 2017年の衆院選では当選者の女性比率は10.1%とほぼ横ばいだった。

 参議院議員選挙についても2007年選挙で当選者の女性比率は26人(選挙区14人、比例12人)、21.5%と1989年の反消費税導入選挙におけるマドンナブームの17.5%を越える比率となったが、2010年には再度14.0%へと低落した。その後、再度上昇傾向にある。

 2019年7月の参議院選は、「男女の候補者数をできるだけ均等にするよう政党や政治団体に求める「政治分野における男女共同参画推進法」が2018年5月に成立して以降、初の大規模国政選挙となった。ただ、女性候補の比率は過去最高の28.1%となったものの、全当選者に占める女性の比率は22.6%にとどまった」(時事ドットコム2019.7.22)。この点に関しては図録5238b参照。

 2022年7月の参院選では女性当選者数が35人と過去最多の2016年、19年の28人を超え、28.0%と大きく上昇した。

 日本の政治家の女性比率が低い点については、女性議員比率の国際比較を行っている図録5238b参照。

 この他、海外旅行者の女性比率は90年代に入って急拡大したが、99年を境に再度低下している。図には掲げていないが、海外在留邦人の女性比率は1999年から女性が男性を上回っており、海外での女性の活躍が目立っている(図録1175参照)。

 変わったところでは犯罪者の女性比率は1950年代は10%以下であったのが1960年以降1970年代半ばまでに20%近くまで大きく上昇し、それ以降も漸増したが、最近は、再度低下傾向にある。女囚比率は日本は海外と比べやや高い部類に属する(図録2789)。

 スポーツでは女性選手の活躍が目立つ。2008年の北京オリンピックでは金メダルの女性選手比率(女子ソフトボールも1つとカウント)は55.6%(総数9個のうち5個)と2004年アテネに続き女性が男性を上回った。女性金メダリストは1984年ロサンゼルス大会、1988年ソウル大会ではゼロ、1992年バルセロナ大会、1996年アトランタ大会では1個、そして2000年シドニー大会で2個、2004年アテネ大会で9個、2008年北京大会で5個、2012年ロンドン大会で4個、2016年リオ大会で7個と着実に地歩を高めており、図の中でも最も華々しい女性比率上昇となっている(図録3980参照)。

 以下に、女性比率と関連して、女性初の役職、受賞、優勝などの年表を掲げた。

「女性初」年表
  女性初の事象 関連事項
1960年 ・大臣(中山マサ厚生大臣) ・世界初の女性首相(スリランカのシリマヴォ・バンダラナイケ)
1970年 ・東大教授(中根千枝)
1975年 ・世界初の政党クオータ(候補者比率)がノルウェーで実施
1986年 ・通産省局長
・党首(大政党党首、社会党委員長に土井たか子)
・男女雇用均等法施行
1987年 ・高裁長官(札幌高裁)
・芥川賞、直木賞選考委員(女性4人)
・厚生省局長
・子連れ出勤論争(88年末まで)
・「セクハラ」の言葉が登場
1988年   ・「日経ウーマン」「Hanako」など女性誌創刊
・「婦人」から「女性」へ名称変更の動き
1989年 ・国民栄誉賞(歌手美空ひばり)
・内閣官房長官(森山真弓)
・参議選で「マドンナ旋風」女性22人当選
・初のセクハラ裁判始まる(福岡地裁)
1990年 ・国連難民高等弁務官(緒方貞子) ・「結婚しない症候群」流行語に
1991年 ・市長(兵庫県芦屋市長北村春江)
・副知事(東京都副知事金平輝子)
・アルゼンチンで世界初の法的クオータを導入
1992年 ・7大陸最高峰制覇(田部井淳子) ・育児休業法施行
・漫画家の故長谷川町子に国民栄誉賞
・外務省キャリア官僚小和田雅子、皇太子妃に
1993年 ・衆議院議長(土井たか子) ・細川内閣発足で女性閣僚3人
・パートタイム労働法施行
1994年 ・最高裁判事(高橋久子)
・警察署長(警視庁三田署長桜井るゑ子)
・宇宙飛行士(向井千秋、宇宙へ)
 
1995年   ・「超氷河期」女子学生の就職難
1996年 ・芥川賞、直木賞女性独占(芥川賞川上弘美、直木賞乃南アサ)  
1997年 ・事務次官(労働省事務次官松原亘子)  
1998年 ・冬季五輪金メダル(長野五輪スキー・モーグル里谷多英選手)
・プロ野球セ・リーグ会長(高原須美子)
・厚生白書「新・専業主婦志向」紹介
1999年   ・育児・休業介護法施行
・男女共同参画社会基本法が施行
・青年海外協力隊(20〜39歳)女性派遣者数が男性に対し逆転
・低用量ピル(経口避妊薬)認可
・埼玉県桶川市でストーカーによる女子大生殺害事件
2000年 ・新幹線運転手
・知事(大阪府知事太田房江)
・大相撲横綱審議委員(脚本家内舘牧子)
・五輪マラソン金メダル(シドニー五輪で高橋尚子選手)
・介護保険法施行
・フランスでパリテ法(候補者男女同数法)成立
2001年 ・女子大以外の国立大学長(東京外語大学長池端雪浦) ・小泉内閣発足で過去最高の女性閣僚5人
・ドメスティックバイオレンス(DV)防止法施行
・看護婦、看護士を看護師に統一
2002年   ・石原慎太郎東京都知事「文明がもたらしたあしき有害なものはババア」発言
2003年 ・世界ゴルフ殿堂入り(樋口久子)  
2004年 ・参議院議長(扇千景) ・芥川賞に最年少綿矢りさ(19)と金原ひとみ(20)
・アテネ五輪で過去最高の女子9選手金メダル
・このころ男女共同参画に揺り戻しの動き
2005年    
2006年 ・冬季五輪フィギュアスケート金メダル(トリノ五輪で荒川静香選手)  
2007年 ・カンヌ映画祭グランプリ受賞監督(河瀬直美監督「殯(もがり)の森」) ・柳沢伯夫厚労相「女性は産む機械」発言が問題視
2008年   ・女子プロボクシング始まる
2009年 ・政令指定都市市長(仙台市長奥山恵美子) ・女優森光子に国民栄誉賞
・衆院選で女性議員が最多54人
2010年 ・日銀支店長(高松支店長清水季子)
・都道府県議会議長(福岡県田中秀子)
・女子プロ野球開幕
・プロテニスに復帰したクルム伊達公子選手(39)が14年ぶりに4大大会で優勝
・「イクメン」流行語
2011年 ・女子サッカーW杯優勝(日本代表「なでしこジャパン」) ・「なでしこジャパン」に国民栄誉賞
2016年 ・東京都知事(小池百合子)
・五輪史上女性初の金メダル4連覇(女子レスリング伊調馨)
・民進党代表(蓮舫代表を選出、民主党時代を通じてはじめての女性代表)
・匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね」を国会で議論
2018年 ・米国発#MeToo運動、財務省福田事務次官のセクハラ問題
・政治分野における男女共同参画推進法成立(5月)
(資料)東京新聞大図解「女子力は今」(2011年9月25日)、同「女性の政治参画」(2016年11月6日)、毎日新聞「平成の記憶 女性の進出」(2018年6月18日)ほか

(2005年8月12日収録、9月13日改訂、2007年5月25日犯罪者追加、6月8日、7月31日更新、2008年8月27日更新、2009年6月1日・9月1日更新、2011年9月25日「女性初」年表追加、2012年12月18日更新、2013年9月12日・12月25日更新、2014年12月15日衆院選結果、2015年12月18日女医比率、2016年9月8日更新、11月6日「女性初」年表項目追加、2017年10月25日衆院選後に更新、12月17日医師女性比率更新、2018年12月5日更新、完全失業者数追加、2019年7月22日参議院選結果、7月29日初の女性東大教授、8月17日更新、12月20日医師更新、2020年7月23日海外在留邦人新規、2021年11月1日更新、2022年7月12日参院選結果)


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