戦後日本の家族観の変化は大きい。この点を、人口問題・社会保障研究所の「全国家庭動向調査」によって、この20年の間に家族の範囲が同居を条件としなくなってきたことから見てみよう。

 1993年には、まだ、有配偶女性にとって、結婚した自分の息子でさえ、同居していなければ家族ではないと感じる者が4割もおり、夫の親でも同居していなければ家族ではないと感じる者が53%と過半数を越えていた。同居していることが家族の条件として非常に重要だったのである。

 今(2013年)では、両方とも、同居していなくても家族だと感じるようになっており、同居は家族の条件ではなくなったのである。

 もう1つの変化は、1993年段階では、「二十歳以上の未婚の子」は例外として、50%前後でほぼヨコ一線であり、同居していなければ血のつながりの濃さとはかかわりなく家族ではないという意識だったが、2013年段階では、血のつながりの濃さで家族であるかどうかに差が出るようになった点である。家族なのは同居している場合という回答が自分の親なら19.5%と少ないのに対して、夫のきょうだいは38.2%と2倍近くになっているのである。

 我が国の戦前の家制度(イエ制度)は、家督を継ぐ子(長男)が親と同居する直系家族を親族関係の中心にすえる家族制度だった。そこでは、同居する親子とそれ以外との立場の違いが重視されたため、娘や次三男は家から出ると家族でなくなった。その時代の名残りが20年程前には、まだ、認められたのである。

 日本の家族制度では他国と比較して血縁によるつながりはそれほど重視されず、農家や商家では、後継ぎの息子がいない場合などで、血縁のない養子が家を継ぐこともしばしばだった。娘で血統がつながる婿養子の場合が多いが、全くの他人の場合もあった。他国では、こうした場合、血のつながりがある甥などを養子に取るが、日本の場合は、血縁にはこだわらなかった。家族が「家」を支えるというより、同居して「家」を支えていく者同士が家族だったのだといえよう。

 戦後、男子単独(長子)相続が男女均分相続に変更となり、親との同居もどんどん少なくなくなった(図録2414)。

 こうした中で、同居を家族の前提条件としてしまうと、家族という人間関係が夫婦と小さい子どもにしか残らなくなってしまうため、グラフに掲げたように、同居していなくても親しく交際し助け合う、あるいはそうすべき親族は家族と見なされるようになったといえよう。

 実は、昔ながらの家族は夫婦しかいなくなってしまったので、夫婦同士のつながりが他国と比べて緊密になっていることがいくつかのデータから明らかになっている。ひとつは世界一少ない夫婦別居率であり(図録1539)、もうひとつは相談しあう相手として夫婦をあげる者の率が世界一多い点である(図録2428)。

(2018年2月3日収録)


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