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 若いうちは好きなことをやって、その後、結婚し家族ができ、社会的にも責任のある立場となると、自分のことというより、周りの人のことを考えて行動するようになる。というのが一般的な人の生涯経路(ライフコース)だと考えられてきた。

 ところが、遊び、勉学、仕事、家事、余暇(老後)という順番で年齢別にはっきり分かれていた生活パターンが、幼年から中高年にかけいずれの年齢でも濃淡はあるもののすべてを行う生涯モデルに変化しつつある中で、こうした年齢ごと、世代ごとのロールモデルは衰退してきている。

 同一設問で長期的な意識調査を5年ごとに継続的に行っている統計数理研究所の日本人の国民性調査では、「自分の好きなことをしたい」か、それとも「人のためになることをしたい」かというシンプルな問をもうけている。この設問の年齢別結果を追うとその傾向がはっきりする。

 1978年には、若者は好きなことをし、中高年は人のために生きるという意識の傾斜がはっきりしていた。

 15年後の1993年には、いずれの年齢でも好きなことをしたいという意識が強まるとともに年齢別の傾斜は弱まった。逆に、人とのためという意識が全体的に弱まるとともに年齢傾斜も低くなった。この時期はバブル期の精神的影響がなお色濃く残存していたのでその影響もあろう。

 それから20年後の2013年には、さらに、1978年から1993年にかけての傾向がさらに進んだ。年齢傾斜がさらに低まり、30代までの若年層は人のためをより重視するようになり、40代以降の中高年はますますわがままに生きようと考える向きが増えている。そして、何と、20代の若者については、好きなことより人のためを重視する者が多くなるという逆転現象まで生じている。

 世の中、変われば変るものだという印象がぬぐい得ない。

 表示選択で、毎5年の動きを追った図を掲げている。こちらを見ると、@「自分の好き」が増えるというバブル期の精神的な影響が1993年〜98年に50代以上では崩壊したこと、Aただし、50代でも、その後、「自分の好き」が徐々に増え、バブル期以上に多くなったこと、B40代以下ではリーマンショックが起きた2008年に「人のため」が急増したこと、C40代以下のこの動きは、2013年には元の水準に戻る動きを見せたが、20代だけは、なお「人のため」が増え続けたこと、などが明らかとなっている。

 年齢差のばらつきの推移を「人のため」の年齢別割合の変動係数で見てみると2003年と2008年の間で急に年齢差が縮小したことが分かる。


「日本人の国民性調査」について
統計数理研究所によって「日本人の国民性調査」が1953年以来、5年ごとに戦後継続的に行われている(同じ問を継続しているが問によっては必ずしも毎回聞いている訳ではない)。長期的な日本人の意識変化を見るためには貴重な調査である。この調査はすべて、全国の20歳以上(ただし2003年〜08年は80歳未満、2013年は85歳未満)の男女個人を調査対象とした標本調査である。各回とも層化多段無作為抽出法で標本を抽出し、個別面接聴取法で実施されている。2013年調査は10〜12月に行われ、回答者は、この問に関しては1,591人だった(回収率49%)。

(2018年10月30日収録、2022年8月7日変動係数推移図)


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