厚生労働省の国民健康・栄養調査(2015年調査)では、睡眠の妨げの原因も調査対象者に聞いており、興味深い結果が得られている。

 男女別、年代別に、睡眠に問題を抱えている人の割合を図録2332で掲げたが、ここでは、その場合、睡眠の確保の妨げになっている理由は何かを聞いた結果を示した。

 男女・年代別に最大となっている要因を取り上げてみると、何の理由で健やかな眠りを確保できないかがそれぞれ異なっている点が目立っている。

 男性については、20代から50代の働く年代では。「仕事」が第1理由となっている。そして、60代や70歳以上では「健康状態」が第1理由となる。定年後の年代になると、仕事から解放されて、睡眠を確保する時間的な余裕は大きく増すが、今度は、加齢にともなって、健康上の理由から、夜中に目が覚めてしまったり、朝早く目が覚めてしまってそれ以上眠れなくなるといった困難に遭遇する確率が高まるのである。

 女性の場合は、高齢になれば、男性と同じように、健康状態が睡眠阻害要因となるが、50代までは、睡眠確保にとっての最大の妨げが、各年代で、次々と異なる原因に移り変わっていく。20代では「就寝前スマホ」、30代では「育児」、40代では「家事」、50代では「仕事」がトップの睡眠阻害の原因となるのである。まさに、女性がたどる男性とは異なったライフサイクルの特徴があらわれているといえよう(注)

(注)同じように、食品を選択する際に最も重視する項目が、男性は、年代を問わず、ほぼ「おいしさ」であるのと比べて女性の場合は年代ごとに「好み」、「おいしさ」、「価格」、「鮮度」と大きく移り変わっていく(図録0323参照)。

 結婚前は、スマホを通じた友人との交流や遊びに忙しく、子どもを生む年代には育児に追われ、子どもが大きくなると、家族のための家事に目が回るほど忙しくなり、そして、子どもが大きくなると、パートなどでの仕事が忙しくなるという「女の一生」が目に浮かぶようである。そして、女性の70代は健康状態が睡眠上の最大の問題となるというのは分かるが、その手前の60代における「その他」の理由とは何だろう?知人との交流、家族に対する心配、隣近所の騒音、あるいは夫のいびき?

 イクメンの増加が話題になっているが、育児で睡眠不足の30代の女性は32.7%であるのに対して男性は7.4%と大きな差があり、なお、男女のギャップを埋めるのは難しいことがリアルに理解される。

スマホの長時間使用が若年層の睡眠不足原因

 「仕事」が50代までの男女、特に男性の睡眠阻害原因となっており、「育児」や「家事」が50代までの女性の主要な睡眠の妨げとなっていることは図のデータから確かであるが、総務省の社会生活基本調査によると、平均すると、仕事の時間は男女とも減少傾向、家事時間はもともと少ない男性はやや増だが女性はむしろ減少傾向なので、仕事や家事・育児が原因で睡眠不足が増えているとは、必ずしもいえない。

 むしろ、時代の変遷にともなって睡眠不足要因としての影響が大きくなっているのはスマホに費やしている時間の長さである。

 「就寝前スマホ」は、20代女性の33.3%が睡眠の妨げとなっていると答えており、「仕事」を上回る最大の睡眠阻害要因となっているが、20代男性も24.6%と仕事に次ぐ大きな要因となっている。また、20代ほどではないが30代の男女でも「就寝前スマホ」は大きな睡眠の妨げとなっている。スマホはそう古くからある存在ではないから、近年、増えてきた睡眠不足の大きな要因になっていると言わざるを得ないであろう。

 年次は後年となるが、スマホ利用で睡眠時間が減ってしまったかを調査した結果のデータを以下に掲げた。若い層ほど、また男性より女性でそうした経験をしている割合が高いことが分かる。


(2018年7月2日収録、2022年8月31日スマホ利用者行動調査)


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