所得や資産の不平等感がましているという意識調査の結果もあり(図録4670)、また相対的貧困率が上昇しているとされるが(図録4654)、かつて「一億総中流化」が議論された時に必ず引用された内閣府世論調査の結果では、果たして、「中流」が減って、「中流の下」や「下流」が増えているのであろうか。

 毎年の動きには変動があるが、ここでは、長期的なトレンドを見たいので、毎5年の平均値を計算し帯グラフにし時系列変化を探った。

 結果は一目瞭然。総中流化という特徴は変わっていない。また、「上」や「中の上」が増え、「中の下」や「下」が減少という傾向が長期的に続いている。また貧困の増大や格差の拡大が進んでいるとされる最近の時期になっても、にわかに「中の下」や「下」といったいわゆる貧困層(あるいは貧困層と自認している層)が増えているわけでもない(むしろ減っている)。

 最近目立っているとすれば「中の上」の増加であり、格差が増大しているとすれば、少なくとも意識上は、貧困層の拡大というより、中堅富裕層の拡大だけが進んでいると考えざるを得ない。

 近年の論調とそぐわないこの意識調査結果はそのため新聞も識者も引用しない。なお、類似設問の代表的意識調査でも同様の傾向となっている点については、図録2294参照。

 公表後、この図録を引用しているブログで「中の上が増加しているのは社会全体が貧しくなっているといわれているので中の中ぐらいの生活程度だった人がより上位と感じるようになったためではないか」という意見を述べている人がいたのを見かけた。なるほどこういう解釈もありうるかなと思った次第。

 徐々に少なくなっている「下」と回答した下層意識を抱く者の割合の年代別推移を図録2293に示したので参照されたい。

 2020年代はコロナの影響や調査方法の変更で以前とは単純に比較できないが、データを更新しておいた。

(2012年11月23日収録、12月3日コメント追加、2014年5月22日更新、12月25日更新、2016年8月30日更新、2021年12月30日更新、2023年2月19日更新)


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