【クリックで図表選択】

   

 コロナによる家計消費(家計支出)の変化について、四半期別、年次別の家計調査結果を図に掲げた。

 四半期別の図を含めてダイヤモンドオンラインの私の連載記事(2021.1.7)には、当時の感染不安、犯罪、雇用の状況についてもふれているので参照されたい。

(四半期単位)

 経済の落ち込みの中で全体としては家計の消費支出も落ち込んだが、その中で伸びていた消費もある。支出額の増えた費目と減った費目について目立ったものを四半期ごとに見てみた図を掲げた。もう1つの年単位の図と異なって瞬間風速的な消費変化がとらえられている。

 「減った支出」の方から見てみよう。

 緊急事態宣言が発せられていた期間を含む2020年4〜6月の落ち込みが特に目立っていたのは、「宿泊料」、「交通費」、「外食」、「洋服」、「交際費」など外出そのもの、あるいは外出にともなう消費であり、外出を大きく自粛されたことがこうした結果をもたらしたことは明白であろう。特に、「宿泊料」、「交通費」、「外食」が50%以上も減っていたのが目立っている。

 4〜6月には「医療費」も15.3%も減っており、病院の受診控えが深刻だったことが分かる。この時期、コロナ感染による死亡より受診控えによる死亡の方が深刻だったとも考えられるのである。

 第2四半期の4〜6月に次ぐ第3四半期は本来7〜9月であるが、ここでは、前年の消費税引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響を相殺するため、もう1か月延長して7〜10月の集計に代えている。

 7〜10月になると「理美容」や「医療費」など消費がかなり回復した項目もあるが、「宿泊料」、「交通費」などはなお深刻な落ち込みが継続している。この2項目と比較して「外食」はかなり回復しているが、これが、第3波の引き金になっているとの見方もあろう。

 次に、コロナの影響でむしろ「増えた支出」を見てみよう。

 4〜6月の消費が最も大きく伸びたのは「生地・糸類」である。これは、マスク不足の中で各自が自分でマスクづくりに精を出した影響であろう。次に「自転車」であるが、通勤を電車にかえて自転車にした者が多かったせいであろう。

 「マスクなど保健医療品」は4〜6月も値が高かったが7〜10月はさらにこれを上回っている。不足していたマスクが出回るようになり、アルコールなど消毒用の物品等も加わった需要の拡大が要因だろう。「トイレットペーパー等」は買い占めの影響で1〜3月から伸びが高かったが、7〜10月には供給の安定により需要増はほぼ収まっている。

 巣ごもり消費の拡大と見られるのは、「麺類」、「酒類」、「肉類」、「生鮮野菜」への支出増である。外食を控えて家庭内で食事するケースが拡大していることがうかがわれる。

 「たばこ」の消費も増えているが、巣ごもり消費の一環と見るか、感染拡大による不安心理のなせる業なのかは見方が分かれよう。

(年単位)

 消費支出の対2019年の20年、21年の実質増減を品目レベルでみると、財では、緊急事態宣言に伴う外出自粛等の影響を受け、 「ガソリン」、「婦人服」、「ファンデーション」及び「口紅」などの外出に関連する支出が減少となる一方、巣ごもり消費の拡大で、「生鮮肉」などの内食関連品目、「冷凍調理食品」などの中食関連品目の支出に増加が見られた。

 また、感染予防への意識が高まったことにより、 マスクなどを含む「保健用消耗品」などの支出も増加した。 マスクをしているので見えない「口紅」も必要性が薄れた。

 サービスでは、総じて減少となっているが、特に、酒類を提供する店舗への営業時間短縮・休業要請などの影響を受け、「飲酒代」が2年連続で大きく減少した。ま た、「パック旅行費」や「航空運賃」など長距離移動を伴う品目の支出だけでなく、「バス代」や「タクシー代」など近距離移動の関連品目への支出も減少した。

 サービスへの支出は、移動や対面を伴うものが多いことから、外出自粛や営業時間短縮・休業要請などがより強く影響していることがうかがえる。

(2020年12月2日図録j033から独立化させ収録)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 時事トピックス
テーマ 感染症
情報提供 図書案内
アマゾン検索

 

(ここからの購入による紹介料がサイト支援につながります。是非ご協力下さい)