内閣府では「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」を5年おきに行っている。対象国は日本の他、米国、韓国、ドイツ、フランス、スウェーデンである。この調査の最新結果から、高齢者の生活と意見の代表的なものを図示した。

 まず、生活の基本となる主な収入源についてであるが、いずれの国でも年金が今や高齢者(60歳以上)の収入の主たる源泉となっている(推移については本文下方の図、及び図録1260参照)。

 ただし、韓国では、なお、年金収入が主たる高齢者は少なく、「子どもなどからの援助」が主が30.1%、「仕事による収入」が主が37.5%となっている。韓流ドラマでは明暗は問わず親子の濃密な交流が描かれるが、こうした背景があると考えられる。社会保障が整備される以前の日本もそうであった。またソウルなどを旅行すると屋台で働くおばちゃんが多いが、働かなくてならない事情があるのだということもこの図からうかがえる。

 7割近く以上が年金収入が主の日本・欧米であるが、日本とドイツ、スウェーデンは公的年金が圧倒的であるのに対して、米国やフランスは私的年金も多い。特に、フランスでは34.2%もの高齢者が私的年金を頼りにしている。

 日本と米国では、韓国ほどではないが、「仕事による収入」を主たる収入源とする者が2割以上いるのも特徴である。

 世銀のレポートに中国の高齢者の主たる収入源の割合のデータが掲載されていたので以下に掲げる。男女を平均すると都市部で46%、農村部で4.5%が年金収入を主たる収入源としている。



 日本も高度経済成長より以前、年金制度が充実する前は、現在の韓国と同様、子どもへの経済的依存度が高かった。以下の図はこれを示したものである。参考に1980年以降の元資料である内閣府調査により、日本における「子ども」以外を含めた主な収入源の推移を示した図も掲げた。子ども依存からの離脱は主として公的年金に依存する年金生活者が増えたからということが分かる。各国の年金生活者割合の推移は図録1260参照。


 次ぎに、高齢者を大切にした政策が重要か、あるいは若者を大切にした政策が重要か、という意識を探ってみると、高齢者が答えている割に、日本とフランス、スウェーデンでは「高齢者をもっと重視すべき」は4割台でそう多くなく、むしろ、「若い世代をもっと重視すべき」が2割〜3割とかなりの比率となっているのが目立っている。高齢者をやや優遇しすぎかなという意識があるのだと思われる。

 逆に、「高齢者をもっと重視すべき」が多いのは、米国と韓国であり6割近く以上がそう答えている。図録8900でもふれたとおり、韓国の人口ピラミッドは高齢者の比率が少なく、選挙でも若者票が大きな影響をもっているため、政策も若者に受ける傾向があるのだと推測できる。私は、以前、韓国の中高年男性が在日の中高年男性と「日本では”老害”が問題とされるが、韓国では”若害”が大きな問題だ」とまじめな顔をして話しているのを聞いたことがある。儒教国にもかかわらず、韓国人においては「年長者を敬う」という徳目は余り重視されていない点については、図録8068参照。

 欧米の中でも比較的若い層が多い米国でも「高齢者をもっと重視すべき」と回答した高齢者が多い(図録8720参照)。

 なお、高齢者の子ども・孫との同居志向の国際比較については、図録1310を参照のこと。

(2007年1月4日収録、2011年6月13日更新、9月6日「子どもに主として経済的に依存する老人の割合の推移」図を追加、2012年2月8日中国データ追加、2015年5月16日日本の子ども以外を含んだ高齢者の主たる収入源の推移の図を追加)


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