日本の農水産物輸出の拡大が注目され、通常、輸出額の推移でそれが示されているが、数量でどのくらいの増勢となっているかは分からない。そこで近年の食料品の輸出と輸入の動きを数量指数(金額指数を価格指数で割った指数)で見てみた。

 1995年までは輸出量低迷に対して輸入量が伸びていたが、それ以降、輸出入ともに増加傾向となった。ところが、2000年以降は、輸入量の横ばい傾向に対して輸出量の増加傾向となった。

 これは、韓国、中国などの経済発展、所得水準向上に伴って、日本の高品質、安全な農水産物への需要が高まったためだと考えられる。

 2008年秋のリーマンショック以降は世界的な経済低迷もあって日本の農水産物の輸出は頭打ちとなった。また、2011年には東日本大震災とそれに伴う原発事故が起こり、2011〜12年の輸出は低迷した。

 ところが、2013年以降は、日本食ブームや円安の進行により、輸出は大きく増加し、2015年には2000年の2倍近くの輸出量に達していている。

 食料品の主要輸出先別に近年の食料品輸出額を追った図を見ると米国とともに香港、台湾、中国への輸出増が全体の輸出額の増加に大きく寄与していたことが分かる。2007年までは韓国の寄与も大きかったが、最近はこれら4カ国と比べると輸出先としての地位は低下している。

 参考までに輸出先上位国への主要輸出品目を掲げると下表の通りである。また2015年の輸出拡大品目についてはコラムを参照。

農林水産物の輸出先(2015年)
輸出相手国 輸出額
(億円)
上位3品目
香港 1,794 真珠、乾燥ナマコ、タバコ
米国 1,071 ホタテ貝、ブリ、酒
台湾 952 タバコ、リンゴ、サンゴ
中国 839 ホタテ貝、丸太、サケ・マス
韓国 501 酒、ホタテ貝、ソース混合調味料
タイ 358 カツオ・マグロ類、サバ、豚の皮
ベトナム 345 ホタテ貝、粉乳、サバ
シンガポール 223 酒、小麦粉、ソース混合調味料
豪州 121 清涼飲料水、ソース混合調味料、酒
オランダ 105 酒、ホタテ貝、種など
(注)食料品以外の農林水産品を含む
(資料)朝日新聞2016.2.3

【コラム】農林水産物輸出拡大品目

 2016年2月2日〜3日の新聞各紙は農林水産省の農林水産物貿易情報発表を受けて、日本の農林水産物輸出の拡大について取り上げている。その中でふれられた各品目の動向について以下に引用した。

(日本経済新聞)
 品目別ではホタテが最も多く、32.3%増の591億円。ホタテの生産・輸出を手掛ける寺本商店(北海道湧別町)は「中国や韓国の引き合いが強く、単価は昨年の1.5〜2倍になった」と話す。魚介類ではサバ(55.4%増の179億円)やブリ(38.2%増の138億円)も好調で、東南アジア向けを中心に伸びている。
 農畜産物ではリンゴや和牛の伸びが目立った。リンゴは55.0%増の134億円、和牛も34.6%増の110億円となり、いずれも初めて100億円の大台を超えた。台湾などに「ふじ」などを輸出する丸金丹代青果(青森県つがる市)は「大ぶりで見栄えがよく安心・安全な日本のリンゴの人気は高い」という。
 海外の和食レストランは15年7月時点で8万9千店。13年には和食は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に登録された。こうした和食人気の高まりも背景に日本酒の輸出は21.8%増え、しょうゆも2ケタ増だった。
(毎日新聞)
 「和牛」は海外でも高級肉「WAGYU」として通用しており、米国のスーパーなどでは現地の一般的な肉と比べて3倍で売られる例もある。ただ、外国で育った和牛も多く流通しており、日本産和牛との差別化も課題となっている。米国の店でも和牛を提供している東京都内の飲食店は「本物の和牛と外国産和牛との味、品質の違いをきちんと説明する必要がある」と強調する。和牛の中でも高級肉とされる神戸ビーフは昨年末、品質を日本政府が認める地理的表示(GI)の第1弾に登録された。ブランド牛としての売り込みが今後の課題となる。
(東京新聞)
 アラブ首長国連邦では「オロナミンC」などの清涼飲料水が人気。冷蔵庫に大量のオロナミンCを常備し、食事中に飲む家庭もあるという。国産ウイスキーも好調、加工食品(アルコール飲料なども含む)は26.0%増の2221億円となった。
 農林水産物輸出額は東日本大震災で一時的に減少したが、13年に「和食」がユネスコ無形文化遺産へ登録され、増加に転じた。日本食レストランが増え、日本酒やみそなどの輸出が伸びた。安全性や品質への評価も高く、中国などではホタテの需要が急増。ナガイモも台湾で薬膳原料として使われ、リンゴは台湾や香港で贈答品として人気。
(朝日新聞)
 世界的に評価が高まっているウイスキーの輸出が増え、前年より41.7%増となった。品目別では、ホタテ貝の輸出が同32.3%増の591億円。中華料理を中心に食材としての需要が伸びており、中国や米国での生産量が減った分、北海道産などの輸出が増えた。野菜などの種も同18.1%増の151億円と伸びた。農水省によると、ブロッコリーの種は世界シェアの大半を占め、日本向けのブロッコリーの栽培などにも使われている。

(2004年6月18日収録、2013年4月29日更新、2016年2月2日・3日更新、コラム追加) 


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