日本の農水産物の輸入は、国土条件の制約の中で所得水準向上に伴う食生活の多様化・高度化に応えるため驚異的な拡大を続けてきた。この結果、図に示したように、世界の農水産物貿易に占める日本の輸入シェアは極めて大きなものとなっている。

 ここでは、農産物についてはEU15の域内貿易を除き、水産物についてはEU、北米といった地域ブロック内貿易を除いた貿易市場における日本とその他主要輸入国のシェアを示している。通常は国家間の貿易額総計に占める日本の輸入額のシェアを示すことが多いがここでは異なった集計をしているので注意されたい。

 日本の人口シェアは2.0%であるのに対して、農産物輸入は、10.2%と約5倍を占め、EU15、米国に次ぐ輸入規模となっている。水産物は33.4%とさらに多く、世界最大の輸入国となっている(通常の貿易額に占めるシェアは2001年に23%でやはり世界最大)。

 日本の農産物輸入は、1960年頃には食用の小麦が主であったが、その後、1980年代には、家畜飼料のとうもろこしや油脂原料の大豆が拡大し、90年代以降は食肉輸入が拡大した。

 この結果、小麦ではEU15に次ぐ世界第2位の輸入額(6.8%)、とうもろこしでは20.5%と韓国の2倍の輸入額で世界第1位、大豆ではEU15、中国に次ぐ世界第3位(10.4%)の輸入国、肉類では24.8%と米国を上回る世界最大の輸入国となっている。

 水産物も1976年にはカツオ・マグロ缶詰やサバ缶詰などを主要な輸出品として世界第1位の輸出国だったのが、エビ、マグロ類、サケ・マス類などを中心に輸入が拡大したため、世界最大の輸入国、輸入超過国となっている。

 近年は、消費の周年化や業務用・加工用の需要拡大に対応して、生鮮野菜・冷凍野菜・冷凍水産物や農水産物加工品などの開発輸入の動きが目立っている。

 一方、人口大国中国では、所得の向上に伴う食料需要拡大により徐々に世界の貿易市場において輸入国としての存在感を増している。特に食料需要の質的変化に国内の農業生産が追従しきれない搾油向けの大豆では世界の輸入の25.6%とEU15に次ぐシェアを占めるに至っている。今後、いくつかの品目で輸入量が増していくとすると日本と輸入国どうしの競合が生じる可能性があるので、こうした意味からも中国は目が離せない存在である(中国における主要農作物の輸出入動向については図録0305参照)。

(2004年11月20日収録)


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