水産物自給率(食用)の動向をグラフにした。自給率(食用)そのものは農水省の公表数値であるが、関連して図に掲げた食用水産物の生産(国内生産量)、輸出、輸入、消費(国内消費仕向量)は、食料需給表に掲げられている「10.魚介類」から「d.飼肥料」を除いた数値を算出してグラフ化した。

 高度成長期の終わり、1970年代前半まで、水産物自給率は100%を越えていたが、その後、国内生産の減少と輸入の増加により、自給率は大きく低下し、2000年から3カ年53%の最低値を記録した。2000年代は、食料自給率全体は低迷を続ける中、水産物自給率はやや上昇傾向にあったが2010年代に入ると消費減以上の生産減で再度低下傾向となった。18年度は生産増でやや回復(食料自給率全体は図録0310参照)。

 水産物自給率は、水産物消費に占める国産水産物の割合であるが、算式的には、生産から輸入超過を引いて、在庫変動を加味した上で、消費量で割って計算される。

 水産物自給率は1964年に113%のピークを見たが、この前後の時期、日本はまだ欧米等に対する缶詰等の水産物輸出国であった。この時期、日本の貿易品の中で、水産物は鉄鋼、船舶、綿織物に次ぐ地位を占めていた(図録4750)。また、国民の旺盛な水産物需要の伸びに対して、遠洋漁業等の生産も順調に拡大し、自給率は維持されていた(漁業生産量の推移は下図参照。水産物需要の長期推移については図録0290参照)。


 1977年の200海里時代への転換、そして1970年代のスケソウダラ生産のピーク、1980年代のイワシ生産のピークを経て、遠洋・沖合漁業の生産量が減少する一方で、消費量の拡大に沿った輸入の激増により、水産物自給率は大きく低下することとなった(水産物生産動向については図録0670参照)。例えば、サバの味噌煮でも50%は輸入品で構成されている(図録0320)。

 2000年から連続3カ年53%の底を打った後、最近は、生産、輸入が減少傾向となる中、消費量も減少傾向となり、一方で輸出用はかなり回復しているため(08年度は低下したが)、自給率は62%程度とやや回復基調となった。(この場合の自給率の上昇は、国内供給力の回復ではなく、高い価格水準の国際市場で日本が買い負けして輸入が減少しているためと見られる。日本の消費者にとって魚は必需品に近いので過当に高いものは買わないが水産物ブームの欧米や中国では金持ちを中心に奢侈品に近い魚を多少高くても買うからであろう。)

 ただし2011年度は東日本大震災による漁港被害、及び福島第1原発事故による放射能汚染とその風評により、生産減、輸出減、輸入増となり結果として自給率は前年度の62%から58%へと急落した。自給率から見ると2012年度も同じような状況が継続していたが、2013〜14年度には反転した。

 2015年度以降は生産減の傾向が目立ち、2017年にはついに輸入を歴史上初めて下回った。

(2007年1月29日収録、8月13日更新、2008年8月5日更新、2009年9月18日更新、9月22日コメント加筆、2010年8月11日更新、2011年8月16日更新、2012年8月10日更新、2013年8月8日更新、2014年8月6日更新、2015年8月7日更新、2016年8月18日更新、2017年11月12日更新、2018年8月9日更新、2019年8月6日更新、2020年8月6日更新、2021年8月26日更新、11月27日漁業生産量の推移図、2022年8月6日更新、2023年8月8日更新)


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